感謝の心を忘れずに。 | シャチハタ丸奮闘記

感謝の心を忘れずに。

自然体、それこそが弓道の基本であり、究極であると聞いた事がある。


それは、心身ともに変わりないことであり、焦りすぎても、戒めすぎてもならないらしい。


過剰な自信も、裏づけの無い不安もまた、ただその手を狂わせるだけであると伝えられている。


……嘘ですごめんなさい。




こんな事を書いたのは別に皆さんに向けてではないんですよ。


今完全に浮かれてしまっている自分自身への戒め。


浮かれすぎている今の現状をプラスマイナスゼロへと導こうとする僕の必死の抵抗。


何があったのか、と尋ねられる方が大多数であるだろうと言う事はすでに想定の範囲内。


夜になっても抑えられないこの思いはおそらくそれだけ待ち望んでいた事でもあったのでしょう。




私、シャチハタ丸。本日初皆中しました。

(実はそろそろ一年が入る時期。ギリギリ主義もほどほどしろよ……)


閲覧者は大概弓道経験者が大多数でしょうが、一応しらけずに聞いていただければ。


立ちという四本的に射掛ける種目? があるのですが、これで全て的に当てる事を皆中と言います。


なんだ、簡単なことじゃないか。と思ったあなたは熟練かド素人。


もうすでに弓道部へと入部してから一年近くが経過します。


じきに後輩達も入ってくる頃合でした。同僚にもそれについて随分とせかされました。


なぜ、どうして自分だけが皆中できないのか。必死に自分の実力を底上げしようと焦った事もありました。


焦れば焦るほどに暴れる押手を押さえると、勢いを失った勝手に悩まされた事もありました。


(押手は弓を握る手、勝手は弦を引く手)


今日も、二回ある立ちの一度目は一本も的に掠めることなく終わりました。


問題はこの二度目ですが、これは正直自分でも理解がイマイチできなかったり。


まず、一本目。一度目の立ちで的の前方へと矢が飛んでいく事はわかっていたので、


拳一個分。後ろに押手を動かしてその場で照準。後はただ何も考えず離れる。


ここで、当たります。


やはり、照準の問題が一番の命中率低下だったか、と思いつつ矢をもう一度つがえます。


二射目。ひとまず、先ほど拳一つ分押手を後ろに動かす事の有効性が実証されたので、次は……


押手の固定。ちなみに、これを一立ち目で怠ったがために四方八方に矢が飛んでいきました。


まあ、四本しか撃っていないから語弊があることは間違いないですが。


固定、後はもう何を考えるわけでもない。勝手に集中を集めることなく矢を放つ。


音が鳴りませんでした。命中の声が上がりましたが、僕と同時に矢を放った人もいて、当たったかは不明。


僕はここで必死に間的を見ないようにしていました。当たっていようがいまいが変わらない。


変わっちゃいけないと言い聞かせて、でも、三本目の的を見る際に見てしまったのです。そして、


目が悪くて何も見えませんでした。


目が悪い事について良かったと思うことは後にも先にもこれだけでしょう。


これで心に完全なる諦めが付いた僕は勝手の方をすっきりと離す感覚でもう一度当てます。


念がために言っておきますが、この時の僕の体感本数は半矢(二本)です。


これから、最後の出番が回ってくるんですが、いつもと違うのはただ一つ。


これまでが半矢行けば満足していたのが、今回はちょっと自信の付き方に変化がありまして、


とりあえず手を抜かなければ三本はいけるのではないかという変な自信に溢れていました。



変だな、と思うわけではなかったけど、ちょっといつもと違うことだけわかっていた。でも。


個人的経験上、変な自信は大概身を滅ぼす。だから。


射の態勢に入る前に大きく深呼吸。焦る気持ちを抑える。


ただ、これだけは何も考えずに矢を狙った。射った。当たった。


三本か、四本か。もしかしたら胸の中でモヤモヤしていたのかもしれない。知りたかったのかもしれない。


だからこそ、見えなかった二本目を知りたくて当てたのかもしれない。


拍手は鳴り、多少歓声交じり、ちゃんと残心を残して。


すぐ後ろにいたたーちゃんから「おめでとう」


こぼれ出た言葉は「ありがとう」


そして、先生とコーチから「そこで喋るな」


ほんの少しだけ、背が伸びたような感覚。それでもやっぱり僕は僕なんだな、と苦笑い。


笑顔を隠しきれない僕は情けない顔だったろうか?


それが長らく待ち望んだものだったから。どんな気分かはその時まで想像もしなかった。


さらに、ちゃんと目標達成しながらも結局全然関係無い面で注意されている辺りが自分らしくて。


なんだか、色々と嬉しいやらおかしいやら。笑顔を隠せなかった。


祝福してくれるみんなの声がありがたかった。ちゃんとこの日を待ってくれていた人は僕以外にもいた。


部長から、「急げ」との言葉で取りに行った白い羽の銀の矢は、泥に汚れながらも誇らしく的へ突き立っていた。


感無量。その言葉はその日のためにあったのだろう。そう思った。


明日、僕は僕のまま矢を射るのだろう。絶えずに変わり、強弱を繰り返しながら。





ただ、このやっと落ち着いた今だからこそ言いたい事がある。


多分聞いてほしい人に届かない事もあるかもしれない。だけど、


今日の僕の皆中は僕の実力ではない。


それだけは知っておいてほしい。僕自身にも覚えていてほしい。


僕の暴発を直した人がいて、僕の押手を直した人がいる。


僕の射形を大幅に変更した人もいて、僕の心の弱さを見抜いた人もいる。


たくさんの事をたくさんの人々に教えてもらった。それはもう数え切れないし、全部を思い出すことも出来ない。


ただ、僕は今日たくさんの人達の技術とアドバイスを自分の射へと組み込んで皆中した。


アドバイスの量は人によりけりかもしれないけど、それがどうだとは言わない。


ひとまずはここまで来ました。弓道部の皆さんのおかげです。


これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。