いつも私のブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。
『花怜のバッサリ体験録⁉』の第7章の前半部分ができあがりましたので、投稿させていただきます。
このたびは、私自身の手落ちで、みなさまにご迷惑おかけして、誠に申し訳ありません。
では、始めさせていただきます。



「花怜ちゃん❤どこか痒いところはないですか?」
防音加工されたカーテンに仕切られた個室の中で、シャンプー台に仰向けになった花怜の頭皮を優しくマッサージするようにシャンプーしながら舞彩が聞いた。
「ありませーん♪」
顔にガーゼが乗せられた状態で、花怜が少しくぐもった声で返事をする。シャンプーと同じ、プルメリアの清々しくも甘い香りが鼻腔を擽(くすぐ)るのを感じながら花怜は、夕夏とはまた別の“至福の喜び”を満喫していた。
花怜が今、座っているシャンプー台の椅子は、ほんの数十分前まで悠生が座っていた椅子であり、着せられている薄紫のシャンプークロスも、ブルーのネックシャッターも、悠生が着せられていた物であった。
……悠生さん、あたし……。
プルメリアの甘い香りに包まれながら、花怜は薄紫のクロスを通して悠生のぬくもりを肌で感じていた。
現実的に考えれば、数十分前に使われていたシャンプー台の椅子はもちろん、シャンプークロスやネックシャッターにも、その前に使った人間の体温など残っているはずがない。
だが、花怜はそう思い込むことによって、告げることのできない悠生への想いを、自分にとって“至福の喜び”へとすり替えていたのだ。
亜沙美の言葉を借りれば、まさしく一目惚れであり、もはや完璧にお熱なのだ。
だが、それは決して許されない想い……。何故なら悠生には、仁美という恋人がいる。
そして仁美は、まったくの初対面の自分に優しく接してくれたお姉さんだ。自分を含め、亜沙美、夕夏とも『いいお友だちになれそうね』なんて言ってくれた仁美の気持ちを裏切ってまで、悠生を奪うことなどできるわけがなかった。
兄弟姉妹がいる、亜沙美や夕夏(亜沙美には4つ年上の兄がいるし、夕夏は5人姉妹の末っ子だ)と違ってひとりっ子の花怜は、心のどこかで姉のような存在を求めていたのかもしれない。
……だったら、せめて今だけでも……。
悠生が着せられていた、シャンプークロスとネックシャッターを着せてもらうことで、悠生と同じ時間を過ごし、そのぬくもりを肌で感じていたい……。例えそれが、妄想じみた独りよがりな思慕だと、他人から蔑まれても構わないと、花怜は思っていた。
ある意味、純情といえば純情だし、経験豊富な輩からすれば、ウブなお嬢ちゃんでしか映らないだろう。
花怜は、そういった世事に関しては、これでもかと思うほど、奥手で、引っ込み思案な女の子であった。
だからこそ、他校の男子学生たちに格好の標的にされるのだ。県内有数の進学校にして、お嬢様学校に通う、純情で、かわいらしい(花怜には、そういった意識はまったくないのだが)女の子を彼女にすれば、それだけで充分なステイタスシンボルになるのだから……。
……それにしても、舞彩さんのシャンプーって最高❤マジ気持ちいい~♪それと、この香り……。
シャンプー同様、顔に乗せられているガーゼからもプルメリアの香りがする。それを鼻腔の奥に吸い込みながら花怜は、舞彩の優しい指遣いと悠生のぬくもりの余韻に酔いしれていた。
「花怜ちゃん❤襟足のところ洗いますから、ちょっと頭持ち上げるね。首とか苦しかったり、痛かったりしたら、遠慮しないで言ってね❤」
「は~い♪」
舞彩が片手で、花怜の後頭部を支えるようにしながら、襟足のところを丁寧にマッサージするようにみたいに洗っていく。クシュクシュと泡の弾ける音が、耳のすぐそばで聞こえる。
……それにしても、このネックシャッターってエプロンみたいなの、カットする時だけかと思ってたけど、シャンプーする時にもするのね。舞彩さんの言うとおり、ホント襟のところ濡れてない……♪
花怜がいつも行っている美容室では、シャンプークロスでなく、短いケープを着せられるのだが、たまに襟のバイアステープの部分が湿っていることがあり、それが直接地肌に当たって不快な思いをさせられた経験が何度かあった。
シャンプーだから水を使うから仕方がないと言ってしまえばそれまでだが、自分は髪をカットしてもらって、さっぱりした気分になりたくて美容室に来てるのだから、それを不快な気持ちにさせられるくらいなら、さっさとカットだけしてもらって、家に帰ってシャンプーした方がまだマシだ!襟のところが湿ったケープを着せられるたびに、そう思ったものだが、この店では、そんな思いはしなくて済みそうだ。しかも、それがネックシャッターというアイテムひとつで解消されてしまうのだから、本当に不思議だ。
もっとも、花怜自身、シャンプーの時はおろか、カットの時でも、ネックシャッターをしてもらったことはなかったし、シャンプークロスだって着せられたのも初めてだったから、何もかもが、とても新鮮なものに感じられた。
……こりゃ、ホント亜沙美に感謝しなきゃね……♪
ずいぶんと勝手なもので、昼休みにあれほど亜沙美に喰ってかかっていたのとはえらい違いである。
……そういえば、亜沙美何してんだろ?まさか、本気でトイレに立て籠っているんじゃ……💦
だとしたら、それこそ一大事だ!
なにしろ亜沙美は、おっちょこちょいで、お調子者な反面、とんでもなく強情っ張りだったりするのだ。
昔気質で、頑固一徹な祖父をはじめ、家族の誰かと口喧嘩するたびに、自分の部屋はもとより、風呂場(と言った方が相応しい檜造りの立派な建物だ)、トイレ(こちらも離れ、しかも和式でなく洋式のウォシュレット)、挙げ句の果てには、幼い頃に悪さをするたびに、祖父に閉じ込められた土蔵(ここにはお菓子をはじめ、漫画雑誌、ランプに寝袋まで置いてある)にまで立て籠ったりするのだから、ある意味たちが悪い。
事実、偶然訪れた花怜たちが説得にあたったことも、1度や2度のことではない。
……それにしても、よりにもよって、他所ん家の、しかも美容室のトイレに立て籠るなんて、一体何考えてんのよ……💦
もはや亜沙美が、この店のトイレに立て籠っているものだと思い込んだ花怜は、それこそ頭を抱え込みたくなったが、袖なしのシャンプークロスを着せられて、シャンプー台に仰向けになった状態ではそれもできない。
なんとかこの膠着状態を脱しないことには……。まさか、亜沙美をこのまま放って帰るわけにもいかない。
なんとか亜沙美の機嫌を直す方法を考えないと……。あれでいて結構単純なところがある亜沙美を説得するには、それ相応のエサでもって釣り上げるのが手っとりばやい。となると、ケーキかアイスかキャンディか……。いずれにせよ、物入りな話である。
……今日が15日だから……げっ!あと10日もある……。
花怜は、毎月25日に母親の怜奈からお小遣いをもらっているので、次にお小遣いをもらえるまであと10日ということなる。自分の財布の中身と相談しながら花怜は、ガーゼの下で再びため息をついた😞💨その時──
「花怜ちゃん❤お疲れさま。じゃ、流しますね~♪」
舞彩が花怜の頭を、シャンプーボウルのクッションの上におろすと、
「花怜ちゃん❤気分悪くなったりとかしなかった?」
「大丈夫です」
「そう。じゃ、流しますから、お湯加減熱く感じたら遠慮しないで言ってちょうだいね❤」
「は~い♪」
シャワーの栓がひねられ、お湯の流れる音が聞こえてきた。しばらくして、ちょうどよい温かさのお湯が、花怜の頭を包み込んでいるシャンプーの泡を流しはじめた。
「花怜ちゃん❤熱くないですか?」
「熱くないでーす♪」
シャワーをかけながら舞彩が、花怜の髪を
優しく漉き上げるようにして、シャンプーの泡を洗い流していく……。
……あぁ、こっちもいいわぁ……❤
頭皮を優しくマッサージしながら洗ってくれるシャンプーも気持ちよかったが、こうしてあったかいお湯で、泡を洗い流してくれるのもまた、すごく気持ちよかった。
……ま、亜沙美のことは、後で夕夏と相談しながら決めましょ……。
自分1人で説得にあたるより、夕夏と一緒の方が何かとやりやすい。それまでに亜沙美が機嫌を直してトイレから出てきてくれたら、それこそ儲けものだ。
とりあえず今は、舞彩の優しい指遣いと悠生のぬくもりを目一杯満喫してればいい。そう思いながら花怜は、微かにプルメリアの甘い香りがするガーゼの下でゆっくりと目を閉じた。



いかがでしたか?ひとつの章を前半と後半に分けるのも初めてなもので、どのあたりで区切ろうと考えた末、花怜ちゃん❤の場面を前半、亜沙美ちゃん❤と夕夏ちゃん❤の場面を後半にさせていただきました。
ネタバレするわけではありませんが、亜沙美ちゃん❤と夕夏ちゃん❤の濃厚な絡みは登場しません。近日中に投稿させていただきますので、よろしくお願いいたします。


※おまけの画像。花怜ちゃん❤こんな風に優しくシャンプーしてもらってたのかな?うっとりしてて、とても気持ちよさそう……♪

薄紫のシャンプークロスが見つかりませんでしたので、とりあえずエクセル丸福さんのウルトラジャンボクロスのブルーです❤

こちらは海外のシャンプーシーン。かなり前丈の長いシャンプークロスですね❤こんな風にすっぽり包み込まれて、シャンプーされたいですね❤

ネックシャッターの色が違いますが、粗切りされる前の花怜ちゃん❤って、こんな感じ?