21時38分、札幌駅5番線。
急行はまなす入線。



青函トンネル開業後も、青函連絡船の役割と風情を受け継いできた列車。


寝台車あり。


青函連絡船の桟敷席を思わせるカーペットカーあり。


超リクライニングのドリームカーあり。


これに座席の自由席が加わり、豪華な庶民派急行。


JR最後の急行列車、はまなす。
平成28年3月21日が最後の運転となります。


22時00分、札幌駅を発車しました。
この夜汽車の風情が失われる前に、さよならフィーバーで賑やかになる前に、静かに夜汽車を体感したくて、ドリームカーの車中の人となりました。

ドリームカーへの思いですが。
20数年前の話で恐縮です。バイトで貯めたお金で買った、学割の北海道周遊券を握りしめ、夜行列車6泊、ユースホステル1泊で北海道を一回りしたとき、札幌から帯広まで乗った夜行列車、「急行まりも」に連結されていたドリームカーなんですね。

学生時代を思い出し、恥ずかしい大人の自分を責める旅路。

夜汽車の窓に映す、今の私。
学生時代に映していたものは、青春の苦悩だったか、未来の自分だったか。
時を超えて、同じ窓に重なるもの。

あのころ描いたもの。
叶ったもの、叶わなかったもの。
淡い夢、渋い現実。

カタンカタン。
はまなすは夜の闇をやさしく切り裂いて走る。過去と今を重ねながら、未来へ向かって、走る。
そうだ、これからも走るのです。

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函館駅で長時間停車。
機関車が交代します。


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雑感。

私は、夜汽車の車内で行われる「減灯」が好きです。

減灯すると、自分を映していた窓ガラスが一転。外からの仄かな灯りが車中に射し込みます。広大な車内に、プラネタリウムのように光が躍り出す。これは最近流行りの個室寝台では味わえない贅沢です。

窓外を青函トンネルの灯りが、光の線を描きながら流れていきます。
ドラえもんのタイムマシーンのようです。

タイムマシーン。
あの頃に帰りたいと思うこともあるけれど、そうだ、これからも走るのです。


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6時19分、定刻。
終着駅、青森に到着。

夢から醒める。

私たちを牽引してくれた機関車が切り離され、車庫へ帰っていきます。

凍てつく北の大地。私を乗せて走ってきた「はまなす」に、感謝。





さようなら、急行列車。
ありがとう、はまなす。
夜汽車の想い出は、永遠に。