安房直子を知っているだろうか。

国語の教科書にも掲載されている、短編小説家だ。
例えるなら、星新一のSFを抜きにして、優しいファンタジーを加えたような。
でも作品によっては、苦い後悔や悲しみを余韻として残す、大人も楽しめる作家だ。
さて、本命は阿部和重である。

この男はすごいのだ。 ラストスパートが。
いや、最初の一行からもう、助走は始まっている。
読み進めていくうちに、飲み込まれ、時を忘れて読みきってしまう。
途中で止めることを許さない、後半からの疾走感がどうにもたまらないのだ。
映画化してもけっこう当たるんじゃないかといつも思う。
誰もやらないなら、わたくしが・・・・とさえ思えるほどに、非の打ち所のない小説家だ。
マイノリティーな人間たちの心情と、自意識過剰すぎる故の行き過ぎた行動、
そしてありえないくらいの偶然が、一体どんな大惨事に発展していくのか、
それはもう、気持ちいい位にあなたをその世界へ連れて行ってくれますよ。
A・M