こんにちは
前回のblogは読んで頂けましたか?
今回は名作解説集vol.2 としまして、前回お話しした “くるみ割り人形” の中の金平糖の精のヴァリエーションについて
【豆知識①】
突然ですが、 “ドラジェ” というお菓子をご存じですか?←これはマカロン(笑)
アーモンドなどを色付けした砂糖でコーティングしたパステルカラーのお菓子なのですが... (画像参照)
ヨーロッパではお祝い事には欠かせないお菓子です
日本でも結婚式で頂いたり、お店でも見かける事もあるかと思います
日本語訳は “金平糖の精” でお馴染みですが、本来は “ドラジェの精” といいます。
... あまりしっくりきませんかね
衣装の色合いやデザインもピンク使いだけでなく、パステルカラーの衣装を見かける事はありませんか?
色とりどりの衣装は、もしかしたら本来のドラジェをモチーフにしているのかも...?
【豆知識②】
“チェレスタ” という楽器はご存じですか?
見た目はピアノやオルガンに似ていますが、鉄琴のような音色...
“金平糖の精” のヴァリエーションのメインになる音色を奏でるのはチェレスタという楽器です
P.I.チャイコフスキーが遠征中に立ち寄ったパリでこのチェレスタに出逢い、この楽器を是非とも自身の作曲に使いたいと思ったそうです。
チャイコフスキーはパリからすぐアメリカに発たなければならなかった為、ロシアにいる親友に手紙を書き、『すぐにチェレスタを買って欲しい!だけど、グラズノフやコルサコフには絶対に見せないでくれ!この楽器は私が最初に使うのだから!!!』と強く主張したそうです
【豆知識③】
A.グラズノフは『ライモンダ』や『四季』などを、リムスキー=コルサコフは『シェヘラザード』や歌劇『サトコ』などを手掛けた作曲家。
P.I.チャイコフスキーとは同じ時代を生き、良きも悪くもライバルだったのでしょうね...
こうしてP.I.チャイコフスキーが初めてチェレスタをバレエ音楽に使用したものが、くるみ割り人形の “金平糖の精” なのです
あの独特なイントロ... 鉄琴のような音色が奏でるアクセントが何ともおとぎ話にぴったりな不思議な感覚ですよね
チェレスタはこの “くるみ~” の成功以来、世界中のオーケストラが購入し、有名になったみたいですよ。
ちなみにM.ラヴェル作曲の『ボレロ』にもチェレスタとピッコロとホルンを合わせて演奏されています
さて
前回のblogでお話しした様に、 “くるみ割り人形” は初演から現在まで各国で様々な演出や振付がされ、沢山のバージョンがあります。なぜなら、他の作品と比較してみても特別『これ!』という決まりが無く、物語でさえアレンジされているものもありますよね。
金平糖のヴァリエーションに関しては、所々で各振付家によってアレンジはされていますが、元祖本家のイワーノフ版を基に振付されています。
では動画で見比べてみましょう
ベルリン国立バレエ団の金平糖va
Y.ブルラーカによる演出振付です。
元ボリショイ劇場の芸術監督であり、様々なバレエ作品を初演当時の台本を正確に復元させる素晴らしい方です。これまでもいくつもの作品を復刻させて発表しています。
(ボリショイ舞踊大学で古典バレエの遺産を学ぶ授業では、運良くY.ブルラーカ先生にお世話になりました)
金平糖の衣装も淡く、ドラジェらしき模様が...?
マリインスキー劇場の金平糖va
これはもう有名な... マリインスキー劇場とワガノワバレエ学校が上演しているワイノーネン版。
ヴァリエーションが短く、最後の回転もカットされていますね。
ボリショイ劇場の金平糖va
Y.グリゴローヴィチ振付によるもの。
なかなか日本では観る事のないVaかと思います。
難しい動きが散りばめられ、ダンサーの高い技術が要求されるグリゴローヴィチのバレエ作品...
“スパルタクス”、“石の花”、“愛の伝説”... その他も彼の作品は沢山ありますが、これぞTHE ボリショイバレエと言える様な素晴らしい作品ばかりです。
英国ロイヤルバレエ団の金平糖va
こちらも有名なF.アシュトン振付。
気品があって上品な振付で暖かみがありますね。
他にも沢山のバージョンがありますが、今回は4パターンのVaを見比べてみました
いずれにせよ、少女マーシャにとって金平糖の精は憧れのプリンセス... 憧れの女性なのです。
もし、あなた自身が幸せを夢見る少女だったらどんな未来を夢見ますか?
そのような事をイメージし、踊りに活かしながら、ヴァリエーションを踊る際にはただ振付を踊るのだけでなく、作品やキャラクターの背景にも注目して是非踊りに役立てて下さい
特にくるみ割り人形はこれまで沢山の振付家によって様々な演出作品が発表されています。
これからの季節に、お気に入りの “くるみ割り人形” を見つけてみてはいかがでしょう?
RBLJ
伊藤智美