エース☆コンバート -5ページ目

【福音】#4



中田は万感の思いでその場所に立っていた。

もとより海外指向の強かった自分が日本代表として世界と戦い、回を重ねるごとに通用するはずという確信は自信に変わっていった。
代表で会う友は次々海外へ渡っていく。
焦り、しかしいくら話をしても手放してもらえぬチームに辟易していた。
諦めきれない海外への想い。
自分が世界でどれだけ活躍できるのか確かめたい。挑戦したい。
我が儘だと言われても、それは小さな頃からの自分の夢。
叶わぬ夢ではなく現実に叶う事が出来るのに。
無理やりにでもチームを離れようとした。
……その矢先に、怪我をした。
二度と選手としてピッチに立てなくなるかもしれないと告げられ手術に踏み切った。
長く辛いリハビリが始まり、暗闇を手探りで歩いているような毎日。
乗り越える事が出来たのは『海外』への想いだった。

一日一日可動域を少しずつ広げていく作業。
復活を遂げたその日には付き添ってくれていたトレーナーが涙を流して喜んでくれた。
チームのみんなも喜んでくれた。

だがすでに心に決めていた。
選手生命を脅かすような怪我をして、二度とピッチに立てなくなる時がまた来るのならばもう悔いを残したくない。
海外へ。
不義理と言われればそうだったかもしれない。
ただもう押さえられなかった。自分を。
自分の気持ちを。

いつか日本に帰り再びチームに戻れたなら。
その時は
持てる力の全てでチームの為に働こう、と。心に誓った。



去年は本調子ではなくて最終節のピッチに立つ事はままならなかったけれど今年は違う。
動ける。動けるのに膝の具合が良くなってきても一向にベンチ入りすら出来ずにいた。
目的の為なら手段は選ばない。
こんな事は海外では日常。
顔見知りの記者に、冗談混じりに言った。

『…あまりにもメンバーに選ばれなくてさすがに腐りかけてますねぇ。移籍も視野に入れているんですよ』

効果はテキメンだった。記事に書かれ作戦は成功を収める。
しばらくしてベンチメンバーに名を連ね始めた。

汚くても
自分が望むならばそれが正義だ。

自分自身の評判を下げるようなプレーをしなければいい。
選ばれて当然になればいい。
きっかけがどうであれ決まった人数しか出れない試合なのだから。

他人を蹴落としてでも
自分は這い上がり勝ち進んで行く。


勝負の世界には敗者と勝者しかいない。
ならば
勝者になる。

何がなんでも。

【福音】#3



ゴール前でボレーシュートを決めた田代がサポーターを湧かせている間、黙々とストレッチをする面々。

小笠原はゆっくりと左足を前に伸ばした。 栄光の数と同じだけ痛んだ体。
今年は特に無理をしたかもしれない。無茶と止められもした。
だけど譲れなかった。なんとしてでも勝ちたかった。
優勝の瞬間をピッチの上で味わいたい。
去年のように外で観戦しなければならないのはもう耐えられない。
だからこそ90分間を戦い抜く。
熾烈な痛みとの戦いは自分自身との戦いだ。
ピッチを見回す。
傷付いてない選手など居ない。
誰にも知られぬ戦い。


連続の快勝に、このまま勝ち点の記録を更新して優勝するのではと勘違いをしたかもしれない。
挑戦したアジアで、またも苦汁を味わった。
そして長い長い敗戦続きの日々。
これといった原因もわからないまま過ぎていった、あの辛い時期をもがき試行錯誤しながら乗り越える事ができた。
その自信。
誰にどんな事が起きようとも支え共に挑む。
相手など関係無い。
全力を出し切る。獲物を刈る獅子のように。


小笠原の傍らに、同期の中田と本山。
ゴールマウスにはやはり同期の曽ヶ端が佇む。
千葉戦でのスタメンで久し振りに揃ってピッチに立った。
病で、怪我で、海外移籍で、
いつしか揃わなくなった顔ぶれ。
同じ年の新井場が移籍加入し今では見慣れ馴染んだあかいユニフォーム姿。

アウェイである以上、あかく染まった満員のスタジアムに詰めかけた5万人の観客が全て自分達を応援してくれているサポーターではないけれど。
きっと。
全国にいる鹿島を応援してくれているサポーターを集めたらこの位…いや、もっと居るだろう。
信じて見守ってくれているはず。

勝つ。
リーグの頂点に君臨する。
それは常勝鹿島アントラーズの義務。

弁舌爽やか



ああ、面白かった゜。+(o´∀`)ノ+。゜



相馬さんのレジェンドトークショー。
もう無いだろうなぁと思いながらチケット売り場行ってみたらギリギリラスト一枚ありまして.+'(・∀・)'+.
これをラッキーと言わずしてなんと呼ぶ。

…で、ですねぇ。
相馬さんの全盛期にはまだ自分は鹿島のかの字も知らず、相馬さんがちょうど長期離脱していた時期に鹿島サポーターになったのですがその後リハビリを経てヴェルディに移籍、そして川崎に移籍で現役を終えてしまわれたので


あまり接点と言う接点は無く。


ただ『解説魔』って言うんですか?

昔のフリークスに載っていたんですが、試合後のインタビューなど逐一細かな説明を盛りこんだお話をされては、かいていた汗が乾ききり奥野さんや石井さんが話を切りに来る事しばしばなどと『話すと長い』との記述を度々見るにつけ
そのようなイメージが出来上がっていた訳です。

司会の高城さん曰わく
『だって相馬さんはマグロみたいでしょ』
と氏の達者な弁舌を
まぁー喋らないと生きていけないかの様に茶化していましたね(*´艸`*)

でもね相馬さんのお話はすごくわかりやすいし

『とにかく(視聴者が)ネガティブになるような解説はしたくないので』

とポリシーを持ってお仕事されている、その姿勢の素晴らしさに感銘を受けましたですよ(´Д`)



その道の一流を知る人は
どこへ行ってもまた一流です。



S級コーチの資格を取って、今は日本代表コーチ。
いずれ鹿島に戻って来てはもらえぬかと、一鹿島サポーターの自分としては願わずにはおれませんが



日本の、
世界と肩を並べる為の
国としての選手の底上げ


に、携わるべき方でありますよ。
いやはや
インテリジェントルマンでした。

横でお話を延々聞いていたいですねぇ(´ε` )
すっかり相馬ファンになりました。



肝心のトークショー内容は


『どちらかと言えば川崎に近しいですが、鹿島も気にしてくれていますか?』という質問であったりとか
(*勿論常に録画予約リストには入っている、との事)

『現時点での勝てない鹿島』についてであったりとか
(*縦に焦りすぎている、と言う解説)


『優勝の可能性』であったりとか
(*今日の試合次第、先制点が大事と言う解説)

『日本代表』についてであったりとか
(*自分の頃は予選が大変で本番はオマケのような夢舞台、今の代表は予選が簡単に進みすぎてしまって本番が大変だろう、世界とのレベルの違いなどの解説)



簡略ですがこんな感じでした。


あ、あと高城さんが某選手に
『今日相馬さんが来るんですよ』
と言ったら
『前回ナラさんが来た時は試合に負けてしまって、試合後に逆に肩を叩かれながら挨拶したので、わざわざ鹿島に来て負け試合を見せては申し訳ないから今回は勝ちますよ!』
って。


( ̄ー ̄)
カッコイイっすね、イバ!



時間があったのでミュージアムの栄光の記録映像なんかを見て目頭を熱くした後の
久し振りの完封勝利だったので

余計に喜びひとしおでした。