【福音】#8
゜
試合開始の笛が鳴る。
人々の悲喜こもごもを生み出す、不変の球体ひとつ。
コイントスで相手チームはエンドを選んだ。
転がり続けるボールを、
最後に征するのは─────どっちだ。
鹿島ボールから試合が始まる。
靴裏で動かぬよう制していたボールを笛の音を確認したマルキーニョスが爪先で野沢にパスを送った。
まだ相手の前からの寄せに距離があると判断した野沢が、すでに駆け上がって来た右サイドにヒールでボールを出す。
得意の早いボール回し。
鹿島の、鹿島たる特徴。
そしてもう一つの特徴……
受けとったボールを持ったまま中に切り込んで行った内田が開始7秒、最初のシュートを撃った。
わぁっと場内が沸く。
惜しくもゴールのバー上に飛んだボールが鹿島サポーターの集まる席に入り込む。
すぐさま戻されたボールを受け取ったボールパーソンが帽子を取って頭を下げ感謝の意を表す。
ベンチではすわ得点かと思わず立ち上がった面々が悔しげに着席した。
そう。
それはどの位置からでも得点できると言う事。GKの曽ヶ端すらアシストをする位。
相手にほんの少しでも隙があったなら、その小さな隙をついて攻撃してくる。
虎視眈々と相手の油断を見逃さない集中力。そして技術。
二年連続リーグ覇者、覇王。
冠は伊達ではない。
相手チームのGKがボールをトップの位置にいるターゲットマンに渡るようにキックをする。
天高くあがるボール。
着地点を読んで中田が指示を出す。
「岩政!」
相手FWの肩を掴んで岩政が飛び上がった。 空中を征する。
ヘディングでクリアし、弾かれた勢いそのままにセンターへあてもなく空をさまよう球は本山が胸トラップで受け取ると、くるりと踵を返し予測不能なドリブルで斜めに突破して行く。
「止めろ!」
相手チームから声が出る。
しかし
「!」
本山は一瞬先にパスを送った。左サイドを疾走する背番号7────…。
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試合開始の笛が鳴る。
人々の悲喜こもごもを生み出す、不変の球体ひとつ。
コイントスで相手チームはエンドを選んだ。
転がり続けるボールを、
最後に征するのは─────どっちだ。
鹿島ボールから試合が始まる。
靴裏で動かぬよう制していたボールを笛の音を確認したマルキーニョスが爪先で野沢にパスを送った。
まだ相手の前からの寄せに距離があると判断した野沢が、すでに駆け上がって来た右サイドにヒールでボールを出す。
得意の早いボール回し。
鹿島の、鹿島たる特徴。
そしてもう一つの特徴……
受けとったボールを持ったまま中に切り込んで行った内田が開始7秒、最初のシュートを撃った。
わぁっと場内が沸く。
惜しくもゴールのバー上に飛んだボールが鹿島サポーターの集まる席に入り込む。
すぐさま戻されたボールを受け取ったボールパーソンが帽子を取って頭を下げ感謝の意を表す。
ベンチではすわ得点かと思わず立ち上がった面々が悔しげに着席した。
そう。
それはどの位置からでも得点できると言う事。GKの曽ヶ端すらアシストをする位。
相手にほんの少しでも隙があったなら、その小さな隙をついて攻撃してくる。
虎視眈々と相手の油断を見逃さない集中力。そして技術。
二年連続リーグ覇者、覇王。
冠は伊達ではない。
相手チームのGKがボールをトップの位置にいるターゲットマンに渡るようにキックをする。
天高くあがるボール。
着地点を読んで中田が指示を出す。
「岩政!」
相手FWの肩を掴んで岩政が飛び上がった。 空中を征する。
ヘディングでクリアし、弾かれた勢いそのままにセンターへあてもなく空をさまよう球は本山が胸トラップで受け取ると、くるりと踵を返し予測不能なドリブルで斜めに突破して行く。
「止めろ!」
相手チームから声が出る。
しかし
「!」
本山は一瞬先にパスを送った。左サイドを疾走する背番号7────…。
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