こんにちは、るるです。


※この記事には小林賢太郎脚本『うるう』のネタバレを含みます。まだ見ていない方は閲覧をオススメしません。それでもいい方はどうぞ。








『うるう』上演時劇場に足を運べず、当時映像化もしないとのことで絶望していた作品。うるう年の今年、一気に見てしまいました。可笑しくて、不思議で、美しくて、切ない世界観。引き込まれました。


「うるう人」として生まれ4年に1度しか歳を取れないヨイチは何の因果か学校でも会社でもいつも余り物でひとりぼっち。本当は友達が欲しかった、けれどヨイチが好きになった人はいずれみんな必ず自分より先に先立ってしまう。失う寂しさに耐えかねたヨイチは激しい喜びも深い絶望もない孤独を選び森の奥ひとりでひっそりと暮らす。そこに偶然ウサギをとる為の罠にかかって現れた8歳の少年マジル。初めはマジルを疎んじ「二度と森に来るな」と追い返すヨイチ。それでも言うことを聞かず毎日ヨイチの元を訪れるマジルとの時間が少しずつ心地よいものになっていく。人間界の時の流れについていけず森に逃げる前の自分を受け入れてくれた人達もいた。だが、無情にもヨイチにとっては早すぎる別れが大切な人を奪っていく。マジルはヨイチの話を聞いても毎日森へと足を運んだ。


「友達になろうよ」


忖度のない無邪気な優しさ、マジルが将来音楽家になりたいという夢の話。自分とは違うマジルの学校の話。ヨイチは面倒くさそうにしながらもひとつひとつに耳を傾け、会話が終われば「もう来るな」と笑顔でマジルに言うのであった。「友達にはならない」とマジルに言いながらも、彼が森に来るのを楽しみにするようになっていたヨイチ。しかし、ヨイチは次第に気付いてしまう。いつかすぐにやって来るマジルとの別れを。自分は、また、ひとりぼっちになってしまう。


「危うく友達になるところだった」


どうして自分だけが余るのか、どうして自分は普通じゃないのか、自分じゃない誰かがいなくなれば自分は余り物じゃなくなるんじゃないか。いつも同じ時間にやって来るマジルの足音に胸を高鳴らせている自分の心を殺し、森のオバケとして再度ひとりきりで生きることを決めるヨイチはマジルとの別れを決意する。


ーそして森の中で40年の月日が過ぎた。とある日ふと日記帳を開くと、あの時「音楽家になりたい」と8歳のマジルがヨイチのために書いて渡してくれた楽譜がヒラリと地面に落ちる。ヨイチは無言でそれを日記帳に戻し、棚に戻す。すると、48歳になったヨイチの耳に、森の中のどこかから楽器の音が聞こえてくる。音の正体を探して走るヨイチ。走る、走るー。たどり着いた先には40年経ってヨイチと同じ48歳になったマジルの姿があった。



観終えて、危うく泣きそうになりました。強がってるけど寂しがりってキャラクターに弱いんですよね私。マジルが夢を叶えたところにもヨイチに聞かせたいと40年も思い続けた努力の時間があったんだろうかとか、どんな思いで森にやって来たんだろうとか、再会を果たしたふたりだけれども、それでもマジルはあっという間にヨイチの歳を追い抜いてやっとできた友達という大切な人のままヨイチにとってはあっという間にマジルは先立ってしまうんだろうなと考えたら、ヨイチの寂しさが埋まることは死ぬまでないんだなって胸が痛くなりました。マジルとの別れにヨイチは耐えられるのでしょうか…。目頭が…。マジルとの出会いで何かが変れたとしてもヨイチの寿命はあまりにも長い。私なら、後を追ってしまうんじゃないかと思ってしまいました。素直に良かったねって言えない切ないお話でした。


よかったら『うるう』の感想、考察コメントで聞かせてください。小林賢太郎さんも、ラーメンズもKKPもポツネンもずっとずっと好きです。

それでは、また。