朝日浴びる、小さな苗たち。

田に水が入るとホッとするのは、私だけでしょうか?

(輪島市石休場町、2024.05.26)

 

…地震後に撮った写真を、載せたい順に載せるか、時系列順に載せるか?迷っていたら、データが吹き飛びました。友人に託してあったバックアップで事なきを得ましたが、人生いつ何があるか分からない(笑)。載せたいものから載せていく事にします♪

 

 

 

「ぼく、つぼみです♪」

 

なりきっている人、分かりますか?🐸✨

(シャクナゲ寺/天王寺, 輪島 2024.04.27)

 

去年の11月と今年3月、私の人生を大きく変えるような情報が入って来ました、間に地震を挟みながら…。1つは食糧難と地球温暖化への切り札となり得る「テラ・プレタ/バイオ炭」、もう1つは、「石垣島の山納銀之輔さんの『1度作ったら1円もお金を使わず子や孫の代まで食べて行ける』エコビレッジ作り(レインボーピープル)」です。うまく説明できるか分からないのですが(そして長いですが)、今回はテラ・プレタ/バイオ炭について書きたいと思います。

 

…20年以上前の話ですが、私は「研究秘書」という肩書で、環境関係の研究所に4年間ほど勤めた事があります。その時学んだ事の1つが、「CO2の排出量(排出権)取引」でした。地球温暖化対策として、個別の企業などに「今年はCO2をここまで減らしましょう」という上限・排出枠を割り当て、それを超えてしまう企業などは、他の企業などにお金を払って追加の排出枠を購入しなければならない、というものです。若かった私は、環境保全の努力をビジネスにしてしまう事に抵抗を感じましたが、「そうでもしないと、社会に広まって行かないでしょ?」と上司に言われたのを覚えています。

 

昨年末、調べ物をして久々に検索したところ、日本でも2026年度から排出量取引(キャップ・アンド・トレード方式)が本格導入されるとの事で、昨年秋には東京証券取引所に「カーボン・クレジット市場」が開設され、取引がスタートしたとの事。再生可能エネルギーの導入や植林などを通して企業などがCO2排出量を削減し、それを国が「J-クレジット」として認定すれば、この市場で株式や債券のように売買することができます(「排出量取引」本格開始に向け 東証に新たな市場開設 | NHK | 脱炭素社会への動き https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231011/k10014221771000.html)。全国的に開始されるのは2026年度ですが、東京都や埼玉県など一部自治体では、2010年頃からすでに自主的に実施されているようです。

 

急にそんな調べ物をしたのは、去年11月に初めて「テラ・プレタ」の存在を知ったからでした。「バイオ炭」という呼び名でご存知の方も多いかも知れません。地震でいろんな物を失った能登ですが、豊富な生物資源と土地を活かして、あるいはこのバイオ炭が新たな活路となり得るのではないかと考え、この投稿を書いています。

 

…土地の痩せた南米アマゾンに、ところどころ非常に肥沃な黒い土(テラ・プレタ)があり、それが先史時代から人工的に生み出されてきたものである事が近年判明し、注目を浴びています。肥沃な黒い土=テラ・プレタと、周囲の痩せた黄色い土との違いはただ1つ、低酸素状態で加熱して作られた生物由来の炭「バイオ炭」が大量に加えられている点だそうで、これにより生産性が飛躍的に高まると言います(炭自体に養分があるのではなく、炭が養分を吸着して流出を防ぎ、微生物が棲む空間も生まれ、土壌が飛躍的に活性化されるようです)。テラ・プレタのある場所では、先史時代からの大量の土器片や人間の居住跡、動物の骨などが見つかるそうで、意図的に炭を作って埋めたものなのか、穴を掘って不要物を燃やした結果そうなったのかは分かっていないそうですが(日本の貝塚のようなものだったのでしょうか?)、コロンブスを始めとするヨーロッパからの征服者が風土病を持ち込んで先住民の人口が激減し、誰もテラ・プレタを維持しなくなった現在でも、とても高い地力を保っているそうです。紛らわしいものに「焼畑農業」があるのですが、焼畑を行ってしまうと、強い日差しや豪雨にさらされて土の養分やミネラルが一気に失われ、後には砂漠化した不毛な土地しか残らないのに対し、バイオ炭は何百年という長期にわたってその地力を維持する事のできる、持続可能な手法です。そのポテンシャルは、英国BBCが製作したテラ・プレタについてのドキュメンタリー番組の中で、「(黄金郷エル・ドラードの)金よりも貴重な遺産」「熱帯雨林を破壊から救い、発展途上国の人々を養うのに役立つだろう」と評されているほどです。

 

また、埋められた炭は変化しにくく長期にわたり炭素を固定(貯留)する働きがあり、炭素が酸素と結びついてCO2になるのを妨げるため、温暖化対策にもなります。これは、CO2の排出量を抑えてゼロに近づける「カーボン・ニュートラル」とは違い、さらに踏み込んで環境中のCO2を減らす事のできる「カーボン・マイナス」のツールとして国際的に評価されており、各国でテラ・プレタを作る様々な取り組みが行われているようです。(詳しくは、英国BBC『エル・ドラードの秘密』https://youtu.be/0Os-ujelkgw、その番組サマリー BBC - 科学と自然 - 地平線 - エルドラドの秘密、または吉田太郎氏 アマゾンの伝統農業 テラ・プラタ - アグロエコロジー・ブログ(typepad.jp) 等をご覧ください。)

 

日本においても、すでに農林水産省が、CO2排出量取引において売買できるJ-creditの1つとして「バイオ炭の農地施用」を認証しています(プレスリリース https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/220630.html )。農林水産省によるバイオ炭の正式な定義は、「完全燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを熱分解して作られる固形物」となっています。いろいろな製造法があるようですが、最も簡単なところでは、穴を掘って間伐材などを燃やし、掘った土をかぶせるだけでも作れるくらいシンプルな物であるにも関わらず、世界的な食料難と地球温暖化を一挙に対策できる可能性を秘めた、まさに夢のような技術なのです。

 

立命館大学が積極的にバイオ炭に取り組んでいて、2022年には社会実装を目的とした日本バイオ炭研究センターが設置されています。立命館大学カーボンマイナスプロジェクトのウェブサイトでは、J-クレジットの製炭者さんが3件紹介されていますが、そのうち2件は「穴を掘って燃やす」スタイルでもJ-クレジット認証を得られているようでした。残る1件はバイオマス発電所で副産物的に発生する炭を活用しているようです( 立命館大学カーボンマイナスPJ - Jークレジットの製炭者の紹介 (ritsumeikan-carbon-minus.org) )。同じタイプかどうか分からないのですが、そういえば輪島にもバイオマス発電所があったなあ…と思っています。すでに自治体レベルで取り組んでいる市町村もあります(静岡県牧之原市・菊川市の例: 「炭にすれば100年ぐらいCO2を閉じ込められる」増加続ける荒れた茶園が切り札に!【SDGs】 | SBS NEWS | 静岡放送 | 静岡県内ニュース・天気 (1ページ) (tbs.co.jp) )。

 

輪島(能登)でも取り組めないだろうか…と私は考えています。日本は炭焼きの長い伝統を持つ国です。「J-クレジット認証を取って販売する」というビジネス的なアプローチはもちろん、間伐材や刈った草、家庭の生ゴミなどのうち安全な物は全てバイオ炭にして、田畑や里山に埋めて行く。農地の生産性が上がるうえ、里山の実りが良くなれば、クマやイノシシやサルが人里に下りなくても冬を越せるようになるのではないか。陸が潤えば、養分は川を経て海に流れ込み(魚付き林)、温暖化で代謝が上がってこれまで以上の餌や酸素を必要とするといわれる海洋生物たちも潤い、そういった生き物たちの大量死を防ぎ、ひいては漁業関係者や魚を食べる消費者にとっても良い結果になるはずです(「海の生き物たちが飢えに苦しむ意外な理由」Wired.jp https://wired.jp/article/the-hidden-awful-way-that-climate-change-imperils-animals/ )。日本に留まらず、バイオ炭を炭素(養分・有機物)が不足している国に送って埋めれば、その国の生産性も上がり、ただ植林だけするよりもずっと樹々の成長も良くなり、南北問題の解決に繋がるはず。温暖化については、いま日本で大気中の二酸化炭素を地中に埋める巨大な建造物が造られ始めているようですが、バイオ炭を埋めるだけで貯留できるのであれば、安上がりなうえ安全なのではないか…と、いろいろな思いが頭を駆け巡っています。輪島の復旧・復興が落ち着いてきたら、土地を探して、自分1人ででもバイオ炭を作って行きたいと夢を膨らませています。この情報が、どなたかの希望の種になる事を願いつつ…。