※このお話は個人の妄想(BL)であり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。


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「……QANTAS‪‪‪××××, spot in.」


受信機から相手操縦士の少し緊張がほぐれたような声が聞こえる。
飛行機は地上滑走路に入り走行し、スポット(駐機場)に停止した。
これでもう安心だ。


「QANTAS‪‪‪××××, good day.」


オーストラリアのカンタス航空の旅客機、QANTAS‪‪‪××××の着陸を許可し、地上滑走路への誘導と到着を無事に済ませた俺は、該当飛行機の操縦士との通信を切った。
そしてひと仕事終えたことにほっとして小さなため息をつく。


大人になった俺は航空管制官の職に就いた。
昔から空に憧れを抱いていたし。
資格や学歴も関係がないから、コツコツと勉強を続けていればいつかは誰でも門戸が開かれる可能性がある公平さも良い。
オメガということで、たまに色眼鏡的な目で見られることもあった俺は、そんな平等さが有難かったのだ。


ちなみに航空管制官とは、空港にある管制塔から航空機を監視し、レーダーや無線電話などを使って操縦士に情報や指示を送って、航空機が安全に飛行できるように誘導する仕事だ。具体的には、離着陸の許可や飛行経路の指示、方向や高度の指示などを行ったりする(注※ネット検索の航空管制官の説明より引用しました)。


閑話休題。
話を俺のことに戻して。
 


空に憧れるなら、まずはパイロットかもしれないけれど。
パイロットの試験はものすごく難しいし、、それに、、
……パイロットには、、アルファの性を持つ者が結構いる。
身体的、知能的能力が生まれつき高いアルファは、パイロットや医師、弁護士など、士業やそれに並ぶ知的職業に就く者が多いから。
俺の父親も医師だし。


……オメガの性に、、目覚めたくない俺としては


アルファの性を持つものが多いと思われる、、パイロットを目指すのは諦めることにしたんだ。


現代では非常に優れた発情抑制剤が開発され、世界中に出回っているとはいっても。
万が一、あの狭いコックピットでヒートなんか起こしたら、、

そしてそこにもし、、同僚パイロットのアルファがいたら、、、
……どれほどまでの大事故に繋がるか、、想像するのも恐ろしい。
それは当然俺だけの問題じゃなくて、乗客の命を含めた大惨事になる。
……まぁ、だからどちらにせよ、俺がパイロットを目指したとしても、暗黙の了解で何処にも採用されないとは思うんだけどね。
そこはどうしても、『職業選択の自由』なんて名ばかりの世の中で。



だけど航空管制官は基本的には管制塔の管制室にこもっているし、自分なりに用心して気をつけていればアルファと出くわす確率も減らせるから俺的にはちょうどいいかなって。

憧れていた空の仕事でもあるし。


そうこうしているうちに、次の機体が着陸体制に入る。
俺は再び無線の通信接続をONにした。