※このお話は個人の妄想(BL)であり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。



--




※前話はこちらです※





それからは毎日、一緒に仕事に行って、一緒の布団に寝て。
(あ、シフトは同じにしていたけど、作業するラインを俺と一緒にしたのは最初だけで、その後翔くんには別のラインに入ってもらっていたよ。色んな場所を経験してもらいたかったし)


で、今日はお休みの日。
とは言っても翔くんはバイトだから「お休みの日」というよりは単に「シフトを入れなかった日」なんだけど。


うちの工場は常に人手不足だから、基本的に勤務日はバイトさんの自由に入れてもらって構わないんだ。それくらい緩くしないと誰もシフトに入ってもらえないんだよね。。
けど、こんなに自由度が高くても、単純作業の仕事がキツいせいか、バイトの定着率は良いとは言えないんだけど。。


さて。
お休みだし、職場からもらってきた食パンもあるし。
こないだ特売で買った卵もあるし。
プライベートブランドの安物だけどバターもあるし。
砂糖とミルクは当然だけど常備してるし(スーパーの中で1番安いメーカーの物しか買ったことないけど。。)


本当はバニラエッセンスとかメイプルシロップとか生クリームとかあるともっと美味しく作れると思うんだけど、、それはちょっとお金がかかるから省いて(残念だけど。。)



でも、少しでも美味しくするために、前日からタッパーに卵液を入れて食パンを漬け込んで冷蔵庫に入れておいてみたりして。。


「ん?
なんか甘くていい匂いがする」


翔くんが鼻をひくつかせる。


「あ、、
約束のフレンチトースト作ったから……」


「ええ?
マジで??」


ぴょこんと翔くんの声が高くなって。


「うん。
とはいっても材料も最低限で、、
その材料も決して良い素材のものとはいえないから、、
……あんまり、期待しないでね?」


俺はちゃぶ台にフレンチトーストを乗せたお皿を並べる。


「わぁ……!
美味そう……!
いただきまーす!」


翔くんの大きな瞳がキラキラしてるから。
俺はますます不安になってきた。


「……あの、、
さっきも言ったけど、、あんまり期待しないで……」


「なんで??
めっちゃ美味いよ!
食パンからジュワッと染み出てくる感じがすごく濃厚だし、バターの黄金色と焦げ目部分のバランスが絶妙だし、香りも……」


「しょおくんたら。
なんか食レポの人みたい。
……てか、そんなお世辞を言わなくても……」


自分でも1口食べてみて。
……まぁ、、不味くはないけど。
至ってシンプルな、、良く言えば『素朴な味』っていうか……
……そりゃ、材料も最低限だから素朴なのは当たり前かもしれないけど。。


「えっ?
お世辞なんかじゃないよ?
潤が俺が何気なく言ったことを覚えてくれていて、こうやって俺の好物を作ってくれて……
すごく嬉しいし、、何なら今までで食べたことのあるどれよりも潤の作ってくれたこのフレンチトーストが1番美味いかも」


「そ、そんな……」


翔くんの光り輝くような笑顔に。
何だか、俺の作ったフレンチトーストがすごく豪華なご馳走になった気がして。


100均で買ったフォークとナイフまでもがまるで純金や純銀のカトラリーみたいにピカピカときらめいて見えてくる不思議……。。



てか。
そんなふうに言ってくれるしょおくんの存在が。
1番輝いて、、キラキラして見えるのは何故なんだろう。。