※このお話は個人の妄想(BL)であり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。


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今日も俺はスマホで『Сакура』の音楽を聴きつつ家路を辿る。
『Сакура』は知る人ぞ知る覆面アーティストなんだ。
ネット上でしか活動してなくて、、たまたま動画サイトで『Сакура』の歌を聴いた俺は、一瞬で彼のファンになって。


『Сакура』の音楽をイヤホンで聴きながら歩く夜勤明けの帰り道。


俺の勤務する製パン工場は年中無休の24時間365日稼働だから、日勤と夜勤が2週間交代の勤務体制になっている。
(もちろんその2週間の中で不定期に3~4日程度の休みはある。)


で、今週と来週は俺は夜勤のシフト。


もうすぐ朝の6時だけど。
冬の早朝はまだまだ暗くて。
東の空にポツンと明るい星が輝いている。


あれは何の星なのかな。。


早速スマホで調べてみると、、
へー、、金星……
あっ、明けの明星?
明けの明星ってなんか聞いたことあるなぁ。


中学までしか卒業してないし、施設育ちで当時あまり勉強する時間も取れなかった俺は、星は綺麗で好きだけど知識はあんまりなくて。。


俺の右腕にかけている小さなポリ袋がガサゴソと揺れている。
中身は職場で作ったパンがいくつか。
製造基準に満たなかったパン(形とか重さとかが売るための基準をクリアできなかっただけで、食べられないわけではない)は、自由に持って帰ることができるんだ。
もちろん限度はあるけどね。
基本的に懐に余裕が無く、なるべくお金を節約したい俺としては、食品を扱う仕事につけて良かったなぁと思っている。
それを狙ったわけじゃないけど。


俺は『Сакура』の曲をふんふんと口ずさみつつ、ぐるぐる巻きにしたマフラーに顔をうずめる。
ああ、、寒いなぁ、、
早く帰ってパン食べて寝よう。。


そんなことを思って、少し歩くスピードをあげたその時。


「……っくしゅん!」


……ん?


ふと見ると、、この辺りにあるアパートや民家の共用ゴミ捨て場のスペースに誰かが座り込んでいた。


寒いのか、そこに元々あったと思われるダンボールを風避けにして。


わ、、
なんかアヤしい人だったらどうしよう……。。


そんなことを思って多少ビビっていると、、顔を上げたその人と目が合ってしまったのだ。



ーー



なんだか、、
とても、、
きれいなひとだと、、思った……


なんていうか、、すごく品がある。
ゴミ捨て場にしゃがんでいて、ダンボールで暖をとっている?のに。
そんなことなどまるで感じさせない、、美しいオーラを放っているような。


「ゴホゴホっ……」


俺がぼんやりと彼を見つめていると、その人が座ったまま身体を折り曲げて急に咳き込んだのだった。