※このお話は個人の妄想(BL)であり、実在の人物・団体とは一切関係がありません。
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ニノに「目立たないようにしてくれたら何やっていてもいい」とは言われたけれど。
ちょっとくらいネットニュースとかを見ることはしても、さすがに、、ゲームとかをするわけにはいかないから。
俺はスマホで天気予報を見る。
午後から雨が降るのか…。
画廊に湿気は大敵だから、湿度に気をつけなきゃな…。。
もちろん、空調で調整されてはいるが、追加でポータブル除湿機を置いた方がいいかも。
そんなことを思いながら、俺は受付に座る。
顧客リストを整理しながら、最近顔を見ないお客さまを思い浮かべ、DM発送の準備をし始めた。
メールでもいいんだけど、、やっぱりハガキや手紙の方が、想いが伝わる気がして。
しばらく視線を落として書き物をしていると。
目の前に影ができ、、受付に座っている俺の前に誰かが立っているのに気づいた。
入り口にあるカウベルが鳴ったはずなのに聞き漏らしたなんて。
俺、そんなに書き物に集中していたのかな…。。
ってか、、
なんか、、
すごい、、イケメン…。
落ち着いた濃いブラウンの、あきらかに上質なスーツを身にまとうその人は、いかにも若きエグゼクティブって感じで。
大きくて気品のある眼差しの中には上流階級と言われる人だけが持つ、ゆったりとした鷹揚さがある。
端正な顔立ちを彩る赤い唇は、ふっくらとエレガントだ。
こういった画廊に来る人たちは、色んな意味で恵まれた環境にいる人が多い傾向にはあるけど。
この人はいかにも社会的地位の高い、、アッパークラスの人間って感じで。
でも多分まだ若い。
見た感じ、、きっと30代の前半、、せいぜい半ばくらいなんじゃないだろうか。
この若さで辺りを払うような高貴さと優雅さ。
立っているだけで華がある。
素敵なひと、、だなぁ……。。
俺がついぼんやりと見とれていると、その人が口を開いた。
「…中に入ってもいいですか?
受付で何か手続きとかあるのでしょうか?」
その人が穏やかに微笑む。
俺ははっとして慌てて答えた。
「いえ、どうぞ中へ…
あ、でももし良かったら受付帳にお名前をいただけたら…」
俺が受付帳を開いて筆ペンを置くと、その人がサラサラと名前を書く。
『櫻井 翔』
うわ、、綺麗な名前だなぁ、、
さくら、に、とぶ、、
「…これでいい?」
櫻井さんが俺に笑顔を向けた。
「あ、はい、、
ありがとうございます…
では、どうぞごゆっくり…」
俺がそう伝えると、櫻井さんが俺のことをじっと見つめている。
……?
「あの…?
何か…?」
「…いや、、
君は綺麗な顔をしているね。
君がこの画廊1番の芸術品みたいだ」
「…え?」
俺がキョトンとするより先に、その人はもう一度俺に笑いかけて、さっさと中に入って行ってしまった。