「…2日間、櫻井さんはほとんど何も食べていないんですよね?
胃腸に優しいうどんにしましょう。
生姜と葱もたっぷり入れて…」


真柴さんがセルフサービスの生姜と葱を、温かいうどんが入った俺の丼に勝手に山盛り入れる。


「…あとね、櫻井さん。
病み上がりだから仕方がないにせよ、顔色が悪すぎますよ。
お日様に当たって日光浴をしましょう。
ちょうどテラス席が空いていますし」


真柴さんがテキパキと決めて俺の前をさっさと歩く。
何も考えたくない俺は大人しく後ろからついて行った。


席についた俺はしばらくぼんやりとしていたが、うどん出汁のほっとするような温かい湯気の香りに食欲を刺激され、箸を取り上げる。


少しずつ麺をすすると、何だか食欲が湧いてきた。


しばらく無言で食べていると、


「…食欲が出てきたようですね。
安心しました」


真柴さんが俺を見て僅かに微笑んでいる。


純粋に心配してくれる真柴さんに俺は申し訳ない気分になり、とりあえずお礼を言うことにした。


「…ありがとう。
真柴さんが無理矢理連れてきてくれなかったら、俺今日もあんまり食わなかったかもしれない…」


「…お役に立てたなら良かったです」


そう言って真柴さんは自分の定食の味噌汁に口をつけた。
その後は特に話すこともなくて互いに黙っている。


昼食を食べ終えた後、俺はまたしてもぼんやりとしていた。
テラス席に吹き込む爽やかな風が心地良い。


ふと、向こうのほうを見るとなんだか騒がしい気がする。
この大学は何人かの芸能人が在籍しているので、もしかしたらそのうちの1人が通学してきたのだろうか…


なんて考えていると。


その喧騒の中央にいるのは、、潤だった。


よく見ると、まるで付き人のように横に控えているのは、、相葉?


思わず俺が凝視していると、真柴さんもそちらに目を向ける。


「…松本さんと相葉さんですね」


俺はびっくりする。


「潤を知ってるの?」


相葉は2日前に俺と真柴さんが話しているところにちょっかいかけて来てたけど。


「…松本さん文学部ですし。
私も元文学部なので、転部する前はちょこちょこ見かけました。
そうでなくてもあのルックスと華ですからね。
目立ちますよね。
いつも取り巻きみたいな方たちに囲まれて。
相葉さんはよく松本さんのそばにいるのを見かけていましたし。」


真柴さんはこともなげに答える。
潤って文学部だったのか。


俺ってほんと、、潤のこと何も知らないよな…。。


いやそんなことはどうでもいい。
何で潤と相葉が一緒にいるんだよ。
ほかにも人がいるとはいえ…。


俺はめちゃくちゃ苛立っていたが、真柴さんの手前、一応何でもないフリを装う。


真柴さんはそんな俺をじっと見据えた。


「…何?」


イライラしていた俺はつい素っ気なく真柴さんに問う。


「櫻井さんて、、
松本さんや相葉さんと何かあったんですか?
こんなことに口出していいのか分からないですけど…。。

…恋愛的な」



俺は飲もうとして手を伸ばしたお茶を危うく取り落とすところだった。