その後ラボに戻り、道具や器具の場所などの説明を受けた。
「…試薬はここ。
当然だけど劇薬類使う時は管理者に申請して棚の鍵借りること。
マスクやゴム手袋とかの一般的な備品はあっちの倉庫。
ラテックスアレルギーはある?」
などと話しながら、テキパキ説明してくれる。
「…松本くんから何か質問ある?」
「…いえ、大丈夫です。
うちの大学にはない機器が色々あって嬉しいです。
例えば、PCRくらいはうちのラボにもありますが、リアルタイムPCRはないので…」
俺は目の前にあったリアルタイムPCRにそっと触れる。
そんな俺の様子を見て、櫻井さんが言った。
「…今日、このまま実験していきなよ」
「え?いや何も準備してきてないですし…」
「これからここでやるなら、培養液とかゲルの作成とか、いくらでも事前に準備できることがあるだろ。
使ったことない機械でマニュアル読んで分からないところがあれば、今日俺割と時間があるから教えてやってもいいし。
隣りの部屋にクリーニング済みの白衣がいっぱいあるから、サイズ合うやつ着てきて」
そう言われて俺は櫻井さんに、隣りの部屋に追いやられてしまった。
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「…ごめん、集中してるとこ悪いんだけど、今日のところはそろそろ終わろうか」
櫻井さんに話しかけられて俺ははっとする。
しまったつい実験に夢中になって。
「す、すみません今何時ですか?」
「もうすぐ23時だよ」
「…!!
すみませんっ…!!
俺、実験に夢中になると周りが見えなくなっちゃって…!」
「…いや、そうやって真摯に研究に没頭する姿勢、俺は好きだよ。
でも松本くんはまだこの大学のIDカードも発行されてなくて、研究室の戸締りも出来ないから…
初日だし、今日のところは終わろう。
あ、それ培養するんだろ?インキュベーターに入れてきて」
「…本当にごめんなさい…」
俺は慌てて片付け始めた。