<彼女・17>




灰色の雲が空を埋めて、僕の心を現しているかのように雨が降った。




ただ、離れたくない・・・・ただ、逢いたい・・・・僕のものでいてほしい・・・・




まるで、この想いが僕の心から溢れて止まらなくなって連れてきてしまった雨なのかと思った。




でも、叶わないのなら想いを言わずに一生見守れる位置でいよう・・・・




愛していてもどんなに好きでも、伝えられない想いがあるという現実。




それに押しつぶされそうになって、自滅して・・・・




でも、これから一生これでいいのかと思った時、雪美の顔が浮かんだ・・・




人はいつか死ぬし、人生は一度きり・・・・




何もせずに後悔するよりも、自分の想いに正直に生きて後悔した方が何十倍もイイに決まっている。




僕の立ち位置は変わらないのだし、雪美に想いを伝えても、きっとずっと雪美を見守っていくことに変わりはない。




『だから、無意味な結婚を続けていくことができなくなったんだ・・・。愛している女が違うんだから上手くいくはずがない・・・・』




目頭を指で挟んで、やっと言えた本心なのだと付け加える。




『・・・・・・今度は僕が聞いてもいいかな?』




『え?』




小さく雪美がうろたえながら聞き返してくる。




『今の僕に決定権はないんだよ・・・・だから、今度は雪美が決めて・・・返事は早ければ早い方がいいけれど、突然こんなことを言われて驚いてるだろうしね・・・・僕は待つよ・・・今までも充分待ったしね・・・』




苦笑しながら言う僕に雪美は頬を拭ってこう言った。




『・・・・・ないわ・・・』




その声は小さくて聞き取れなかったけれど、『もう一度言って』 と僕が言うと、今度ははっきりと雪美は口にした。




『・・・・・・私、言ってないわ・・・・・』




『え?』




今度は僕が聞き返す・・・・何を言ってないんだ?




『・・・・カズと友達に戻りたいなんて一度も言ってないわ・・・』




僕を見つめた後で唇の端に笑みを少しだけたたえ、




一瞬だけ瞳を伏せて、もう一度僕を見た時、あの夜のような雪美がそこにはいた。