<彼女・14>




こんな簡単なことなのに随分と長い間、それが間違いであることを認めてこなかった。




ただ、素直に「雪美が好きだ」と言うだけで良かったのに・・・




長い時間を掛けて、二人の女を不幸にして生きてきて、「いまさら・・・」と言われてしまうかもしれない。




だからといって、このままでいいわけがない。




もう、本当に心が限界に近付いている・・・・




僕が欲しいと願っているのは雪美ただ一人・・・・




だから、妻と愛人と同時に別れを告げようと思う。




独りになって、僕と同じように嘘を塗りかためている雪美を追いかけてみよう。




それで、もし雪美が僕を迎え入れてくれなくても




それはそれで仕方ない・・・・・




恋人にはなれなくても見守っていけるのだし、好きだと思いつづけることはできる。




あの日、『僕じゃなきゃ嫌だ』 と言った雪美の心の奥にある気持ちを引き出せるのか




それはわからないけれど・・・




女が男に一度は体を預けたのだ・・・




たとえ心許している友人とはいえそんなことをするだろうか・・・




答えはすべて彼女の中にある。




そう思って僕は携帯を取り出した。




ただひとこと彼女に 『逢いたい』 とメールを打つのにどれだけの溜息をついただろう。




送信の文字を押すのにどれほど時間をかけ躊躇ったことだろう。




それでも彼女を愛している僕がいる。




寄り添い歩いていきたいと願うのが二人になったならば




この決断が正しかったのだと笑える日が来るだろう。




思いきって僕は指をスライドさせる・・・メールは送られてしまった。




そして数分もたたないうちに彼女からのメール




彼女が選んだ言葉は・・・僕と同じ




『逢いたいね・・・』




僕は自然と唇から笑みがこぼれる。




雪美・・・・僕の方が逢いたいよ・・・・