<彼女・13>
いつか僕が雪美を嫌いになる日がくるかもしれない。
僕の頭の中に浮かんだこの可能性を打ち消したかった・・・
僕はずっと雪美を愛していたかった・・・
素直な笑顔を永遠に焼き付けたかった・・・
それが雪美を手に入れることによってできなくなるのならこのままがいいと思ってしまった。
つくづく馬鹿だと思う・・・・
本当は一緒にいたいのに、毎日でも声を聞きたいと願っているのに、
それができない。
自分で自分の首を絞めて生きているようなものだ。
彼女が幸せでないのなら僕がしてあげたい・・・・
そう思っても「本当にできるかどうか・・・」 「また彼女を不幸にしてしまうのではないか」
そんな不安が付き纏って僕から離れない・・・・
だから、彼女が旦那と離婚せずにいたことに安心したんだと思う
僕が彼女を幸せにしなくても良くなったのだ、と・・・・
もっと想像を膨らませていえば・・・
たとえば、僕と雪美が一緒になったとして、
今と同じ愛情で、強さで、彼女を愛していくことができるかどうか不安になったんだ。
日々の暮らしの中で一緒にいることが当たり前になっていって
最初は楽しかった生活もいつかはお互いを疎んじるようになってしまうんじゃないか・・・
そして、いつか僕が雪美を、雪美が僕を要らないもののようになってしまうんじゃないか・・・
そんな関係になるぐらいなら・・・一緒にならなくてもいいやって・・・
このままの距離で、このままの関係を続けていくことの方が幸せなのかもしれないって・・・
そう思ってしまったら彼女を抱いたあの日から怖くて仕方なかった・・・
頭の中に描いていた夢のような生活よりも
現実の世界で、友人であり続けることを望んでしまったのだ・・・
こんなに彼女のことを想っているのに・・・
馬鹿げた想像で苦しんで・・・本当にそうなるかどうかなんてわかりもしないのに
あの時の僕は目先のことしか考えずに
永遠に雪美という迷路に嵌まってしまったのだった。