<彼女・11>
心を折られながらも、それでも生きていくためには僕が必要だった。
そう言い切った雪美は本心を打ち明けていく
『旦那のことを愛しているだとか、そんなこと思ってない・・・ただ、私の自尊心のために一緒にいるだけよ。だから、フェアじゃないといけないって・・・そう思ったの・・・彼も浮気したんなら私もしないとって・・・そう思ったのよ』
『そのために僕が必要だったわけか・・・』
『ヒドイ女でしょう?だから、カズには怒られても仕方ないって思ってるし、友達に戻れないっていうんなら・・・・そう言っ・・・・』
海からくる風が雪美の髪を大きくなびかせる。言いかけた彼女の言葉が止まった。
目を細め、その髪を耳に掛ける仕草に僕は見惚れてしまう。
どんなことをされても僕は雪美が好きなんだ・・・・
僕を利用したって、だからどうしたっていうんだ・・・・
あの時、僕じゃなかったら嫌だと言ったのは雪美だし、その相手に僕を選んだことがこんなに嬉しいのだから仕方ない。
男ってバカだと思う・・・・いや・・・惚れた方がバカなんだと思う。
この言葉を聞いても、雪美を嫌いになれない・・・・
それよりあの時、僕が電話にでなかったら誰か違う男を選んでいたかと想像しただけでゾッとする。
雪美の裸体をもう一度思い浮かべて、ギリッと唇を噛みしめる。
旦那以外の男が彼女を好きにしたかと思うだけで嫉妬で狂いそうだ・・・
本当は旦那が触れるのも発狂しそうなほど嫌なのに・・・・
自分以外の男が雪美の男になる可能性があったこと、それが自分をこんなにも駄目にしていく。
『っで・・・雪美は僕とどうなりたい・・・友達に戻りたい?戻れると思う?』
そう言った僕の前で雪美が小さく首を振った。
『・・・・違うわ・・・・私が選ぶんじゃないの・・・カズに選んでほしいの・・・・私が選べるわけないじゃない・・・・』
『どうして?』
僕は砂浜をゆっくり進んで雪美の前に立つ
『だって・・・・だって・・・・』
雪美は顔をくしゃっと壊して泣いてしまった・・・。
それは、自分が犯してしまった罪が別れを連れてきてしまうことを恐れているから・・・
『僕は・・・ずっと今までどおり・・・・雪美が僕を必要としているなら今までどおりだ・・・』
そう言って僕は雪美をそっと抱きしめた。
もう二度と、この首筋に顔を埋める日がこないことを少し惜しんで・・・