<彼女・9>




彼女と僕が体を重ねたのはそれが最初で最後・・・




後悔は・・・・・していないといえば嘘になる。




友達として一生付き合うつもりでいた彼女を思わぬ形で手に入れてしまって




次の日の朝には僕の手からすり抜けていった・・・。




長い彼女の髪に指を絡ませたのも・・・・




絹のような柔らかい肌に這わせた舌も・・・




瞳から零れた涙が宝石に見えた夜も・・・




何もかもが夢のようになってしまったとしても




全ては数時間前まで僕と雪美の間に流れた時間だ。




もう、元には戻れないだろう。




そう思っていた・・・・




だが、雪美を抱いたあの夜から2ヶ月が過ぎたころ、彼女から電話が鳴ったのだ。




『話したいことがあるの・・・・』




数秒の沈黙ののちに僕は 『じゃぁ、どこで逢う?』 そう言っていた。




逢いたいと思っていたけれど逢えないとも思っていた




逢ってはいけないと・・・これ以上逢えば今までの想いを伝えてしまいそうだ。




僕たちの関係はあの夜だけの出来事だと彼女には思っていてもらいたい。




あれから雪美が旦那と別れたという話は聞いてなかったし、




それが彼女の選択なのだと「ホッ」ともしていた。




この安心がどういった感情から生まれたのかは後になってわかるのだけれど




この時の僕は、この安心を見過ごして




ただ、この後どういった顔で雪美と逢うのが最良か、そればかりを考えていた。