<彼女・8>
僕が彼女を好きなのは確かなこと・・・・でも、彼女が僕を好きだということは不確かなこと・・・
友達以上であったと自負するが・・・それ以上にはなれない関係。
その壁を壊したいと思ったことは何度もあるけれど、
その最後の一線を越えられないから今がある・・・・
『雪美・・・・・・僕は帰るよ・・・』
声にならない声でなじられた僕は、困った顔をして雪美の隣に座った。
俯いた雪美は顔を上げられないでいる。
そんな雪美に僕は問いかける。
『雪美は誰が好き?』
『・・・・・・・』
ピクンと指が動いてベッドの上に置いてある僕の手の上に重ねようとする。
その手を振り払うことができなくなるのが怖くて、僕は重ねられる前に指をどけようとした。
重ねようとする指が答えのような気もしたが、それが真実なのか今の僕には見極められる術がない。
でも、本当はそんな言い訳みたいなものは要らないんじゃないかとも思う。
僕が雪美に問いかけたのは、本当は僕自身に問いかけたかったものだから・・・
僕は誰が好き?
答えは・・・雪美・・・
彼女が僕を好きだとかそうじゃないとか・・・この現状から逃げようとしている口実に過ぎない。
僕が彼女を好きでいればいい。
たとえ、雪美にとって傷を塞ぐための僕だったとしても、
それで雪美が明日から笑顔を取り戻せるならそれでいいんだって・・・・
そう思ったら、僕は考えるのも理由をみつけるのも馬鹿らしくなって
傍にいた雪美を引き寄せていた・・・。