<恋語り・1 ~想起~>
「俺に似ているヤツと一緒になったんだ」
そうあなたは寂しそうに笑った。
その笑顔があまりにも切なそうで、
悲しそうで・・・私の胸は押しつぶされそうになった。
「顔も声も、考え方も似ていて・・・本当に双子なんじゃないかっていうぐらいそっくりで、高校の時に出会い、一番の親友になったヤツ・・・」
ここで一瞬、時が止まったようにあなたは呼吸を噛んだ。
言葉を紡ぐのに時間がかかり、
言葉を選んでいるあなたが泣いているように見えた。
つらいのなら話さなくていいから・・・・
そう言ってもあなたは、苦笑いをするだけでやめようとはしない。
「違うんだ・・・どこから君に話そうか考えていたんだ・・・」
はぐらかした言葉の影に隠れて、
なぜだろう・・・私の向こう側に、いない筈の女性を見てしまったのは・・・
「あの時・・・俺が思いを伝えていたとしても、彼女は俺のものにはならなかっただろう。
それだけヤツは彼女を愛していたしね・・・でも・・・・俺も同じくらい彼女を愛していた」
繋がらない話はまるでパズルのようだけれど、
最後の言葉であなたの心の傷が何なのかわかってしまったから・・・
だから・・・あなたの声を聞いていたいと思ったのかもしれない。
夜空には満天の星々・・・月はなくて・・・
夏の空も月がいなくて寂しそうに見えた・・・
そんな夜に聞いた話を私はきっと忘れはしないだろう。
あなたを好きになったことを忘れないのと同じように・・・
あなたが苦しくて苦しくて、その苦しみから解き放たれたくて
語った言葉を、私は忘れないだろう・・・・