<恋慕>

たとえば・・・

君と僕とが出逢ってしまうということが、

運命として決められていたことなら、

どうして・・・

どうしてもっと早く出逢わなかったのだろう。

そしたら、こんなに苦しむことはなかったのかもしれない。

君は僕と出逢ったことを「悔やまない」とぽつりと言う。

その切ない声に僕は掛けてやる手を持てないのだ。

ただ、毎日逢えればいい。

顔が見れればいい。声が聞ければいい。

笑顔も、誰かと話す言葉も、僕とは違う奴を見つめる瞳も・・・

すべてを奪えたらいいのに・・・

本当は君を独占したいんだ。

同じ場所にいることのできない僕達に未来がないとしても

そう思うことぐらい自由だろう?

手を握る事も、その指を僕の掌の中におさめることも叶わないのなら、

想うことぐらい自由だろう。

きっと、君とは想いを重ねる事はできないと思っている。

君は既に違う男のものだったし、

僕が君をそこから連れ出すことなどできないと思っているから。

でも、君の笑顔が僕の活力源なのだと君に告白してから・・・

君も「私もあなたの笑顔に励まされてる」

そう言われて、すこしずつ二人の想いが同じところにあったのだと知った。

どうして、あの時僕にそんなことを君は言ったのか。

君も同じ気持ちでいるのだと、僕に伝えたのは何故なのか。

ただ、君を「好き」と感じる気持ち。

それを素直に認めて、ただ君に伝えて、

そして君も僕を好きでいてくれていると判っていても、

僕達が身体を重ねる事はないだろうし、

唇を奪い合う事もないだろう。

君が吸った息をただ近くに感じることぐらいしか僕達には許されていない。

そんな想いをもった二人が同じ場所にいることなど、

みんなにはわからない。

恋慕っても・・・君は僕のものになりはしない・・・。