<影のない街>
ねぇ、どうしてこんなことになってしまったの?
ねぇ、どうしてあなたはそこにいるの?
ねぇ、どうしてあなたはそこで眠ったふりをしているの?
私を驚かすためにしているのなら・・・どうか起きて・・・。
その白い布を顔から剥ぎとって私の前に立ち、
「もう泣かなくていいんだよ」の一言を私にください。
今でも、あなたがもういないなんて信じられなくて・・・。
目の前にいるあなたの姿が愛おしいと思うのに・・・
それを伝えられないなんて・・・
この世の中に神などいないのだと、そう自分に言い聞かせて、
あなたの眠ったように見える死に顔に抱きついても、あなたは帰ってこない。
私を家まで送ってくれたあなたに何が起きたのか・・・
それを示してくれるものは、あなたが最期に見た風景でした。
雨の夜にドライブに行った帰りの出来事。
あなたはなぜか急ブレーキとハンドルを切った跡を残していましたよね。
あの時、あなたは何を見たの?何が起きたの?何を思ったの?
ねぇ、私はいつまであなたを待てばいいですか?
あなたと行った思い出のあの場所にあなたの影を探しに行ってもいいですか?
あなたのぬくもりも、声も、やさしさも、すべて過去のものになんかにできはしない。
心に嘘はつけない。
いつものように時は流れ、何も変わることのない時間。
止まった時間に傷をつけられ、空虚な瞳はあなたの姿を探してまわる。
ねぇ、いつまで探せばあなたを求めるこの声に答えてくれますか?
今あなたが命の灯を燃やした最期の場所にきているの。
ねぇ、このままあなたのところにいけたら・・・
そんなことを願っていたら、私の横に白い子猫が座って離れようとしません。
走ってきた車に向って歩道から出ようとしたとき、子猫が足に纏わりつくの・・・。
まるで「ダメだ」といっているかのように・・・。
ねぇ、あなたですか?
声を届けるためにきたのですか?
この子猫とともに生きろと?
あなたのところにいく時が遅くなっても、あなたは待っていてくれますか?
でも・・・やがて・・・時は動きだすのでしょうか?
そしてあなたの影を探す私もいなくなるのでしょうか?
あなたのぬくもりさえも・・・記憶の森へと誘える私がくるのでしょうか?
お願い、声を聴かせて・・・。そして・・・触れてくれたら・・・