暁の脱走(1950) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

暁の脱走
1950年 東宝(製作:新東宝)
監督:谷口千吉 主演:池部良、山口淑子、小沢栄、伊豆肇、若山セツ子

田村泰次郎原作「春婦傅」の最初の映画化作品である。そして、脚本は谷口と黒澤明の共作。そういう意味ではなかなか見ごたえのある戦場のメロドラマといったところである。あくまでも、ここの主人公たちの不幸は上官の小沢に嫉妬されたことにある。軍隊だからこそというのではなく、今の世の中でもこんな感じで不幸に落とされるものも多いだろう。戦争を指揮するものなら尚更こんな感じになるのはわかる。戦争など、国のためなどという前提でやるのはあくまでもいいわけである。ろくなものでないので、こういう意味ない不幸ばかりを起こすのである。

終戦間近の中国戦線。日本軍が帰ってくる。そこにいなくなっていた兵士(池部)と慰問団の女(山口)がいた。捕虜になっていたのを助けられたのだ。その出会いは慰問団がここに来る時だった。途中、敵の攻撃に会い、山口が顔をだすと「死にたいのか?!」とどなる兵士が池部だった。そして、兵士と慰問団は基地に到着する。山口は歌で兵士たちを魅了するのだった。その夜、上官の小沢が山口を無理やり抱こうとする。そこに電報を持ってきたのが池部だった。小沢は全て秘密だと池部に行って去る。そして、山口は池部を好きになるのだった。そして、たびたび声をかける山口。池部は避けようとするが恋に堕ちる。小沢の嫉妬がひどくなる。そこに敵襲。池部は銃弾に倒れる。見方は撤退する。動かない池部をみた山口は死んだと思い短剣で自殺しようとする。しかし、敵に捕まるのだった。中国の部隊は池部に手厚い治療をしてくれた。山口が中国語を話せたのでよくしてもらえる。しかし、目覚めた池部は屈辱を感じる。中国軍は日本人の洗脳を解こうとする。そして、しばらくして池部と山口は日本軍にみつかり戻されるのだった。そして、尋問にかけられるが、すべては小沢がしきっていた。調書も全て作られていたのだ。幽閉されている池部をみて不憫に思った同僚の伊豆は彼を牢から出し、山口にあわせてやる。池部は「逃げよう」といい、山口に手榴弾を盗んで来いというのだった。池部はそれをその場で爆発させようとするが不発に終わる。一度死んだというふたりは中国人にばけて逃げることに。伊豆はそれを知りながら、門の外に出るまで待ってやった。そして、時間を見てサイレンを鳴らす。それを聴いた小沢は怒り狂い、自分で逃げるふたりに向けライフルを打ち続ける。朽ちる池辺。息絶え絶えの山口は彼の手を握ろうとする寸前で朽ちる。池部は病死ということで処理されるのだった。

私は鈴木清順監督の「春婦傅」を先に見たので、この映画がかなりマイルドに見えた。GHQの要請があり、主人公の慰安婦が慰問団の歌手に替えられたそうだ。それは、山口淑子と野川由美子のテーストの違い通りの映画の違いになっている。

山口は、当時としたらちょっと日本人離れした美人だが、細いがスタイルが特にいいわけではない。同じく慰問団の一員で出ている若山セツ子のほうが日本人受けする美人だろう。だが、主役としてはやはり山口の存在感はすごいものがある。中国語ができることで、中国人と話をするシーンもでてくるが、演技のスタイルが出来上がってる感じがスターなのだ。

池部はここでは丸坊主の無骨な兵隊であり、二枚目という部分は少し捨てている。あくまでもいじめられ役という感じだからこそ、最後に自分の自我で脱走を試みるという部分は見ごたえがある。そこは黒澤脚本も意識してのことだろう。

そして、戦後5年後の映画だが、セットがなまなましい。すべて日本の中でのロケだろうが、中国にしか見えないオープンセットは圧巻であり、その空気感が映画を重厚にし、男女のパッション的なものも高めている感じである。ラストの砂漠のような場所はどこなのか?黒澤的な画である。

娼婦でなく慰問団ということもあるのだろうが、少し女たちの格好が綺麗すぎる。毎日、風呂に入っているような体裁は少し不自然である。主役の山口はそれでもいいのかもしれないが、兵士の汚さと差がありすぎるのが気になった。そして、こんなめかしこんで娼婦的なことは一切なしという感じなのはおかしい。まあ、規制がかかったということなのかもしれないが・・・・。

そんな違和感もあるが、映画としては結構まとまっていて、山口の歌も聴けるし、当時としてはかなり話題作だったようで、思い出の一本としている方も多かったようだ。

まあ、小沢栄のすこぶる偉そうな上官がいてふたりは不幸になるのだが、今の日本を見ると安倍晋三が小沢みたいなものである。集団的自衛権で戦争にいかされて戦死しても病死だといわれるということである。けして、そんな日本にしてはいけないのだ。原爆の祈念の文を使い回しして平気でいたり、他人の話のときには寝ているような首相にゲームの駒のように使われる筋合いはないのだ。映画の中で、池部が捕虜になったところをくやみ、中国人が気のどくに思うシーンがあるが、とにかくまずは洗脳されないことである。みなさん、本当に気をつけましょう!!

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