歌う不夜城(1957) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

歌う不夜城
1957年 東宝
監督:瑞穂春海 主演:江利チエミ、雪村いずみ、宝田明、久保明、越路吹雪

「ジャンケン娘」「ロマンス娘」に続いて作られた総天然色ミュージカル篇。といってもミュージカルのところは日劇や東宝のステージでの舞台である。その部分とドラマ部分のつなぎはすこぶるテンポが悪く。日本の大衆演劇の流れのようである。そして、一貫性のない出し物の羅列も今のテレビのバラエティの作りにつながるやぼったさがある。いまだに日本にミュージカルが定着しきれない理由はこのあたりにあるのだろう。とはいえ、江利と雪村の歌は絶品であり、それを十分にいかせなかった日本というものを考えてしまったりした。

江利と雪村は大ステージめざしてオーディションを受けていた。二人共受かり、スターを夢見て特訓中。しかし、大企業の社長の江利の父(若原正雄)は江利が踊りをやることに大反対。婚約者の江原達怡に彼女をやめさせるようにいう。そんな彼に追いかけらる雪村と江利を救ったのが見知らぬ青年(久保明)だった。彼女たちは教会の少女を慰問していたりした。次のデビューは雪村だとうわさされていたが、ふたを開ければ江利になっていた。すべては若原の仕業だった。江利を舞台にだし、新聞社に悪い記事を書かせやめさせようとしたのだ。だが、結果は江利のステージを見た新聞社は絶賛の記事を書いてしまう。そんな若原の策略を知ってしまう江利は次の舞台の前に怪我をするふりをする。江利のかわりにこんどは雪村がステージにのぼり喝采を受ける。江利は舞台をやめて若原と一緒にアラスカにいくと言い出す。だが、江利をまたステージに戻したのは久保だった。久保は若原に雇われていたのだが、江利にやりたいことをやるようにステージに送り出す。雪村と江利のステージを若原は見つめていた。

映画の最初と最後に越路吹雪のステージがでてくる。当時の東宝の舞台で稼ぎ頭だったのではないか。あるいみ日本人離れした容姿とその歌声がファンの心をつかんだのはよくわかる。映画の四分の一程度がステージシーンである。当時の日劇と思われるステージでのラインダンスやさまざまな出し物でその雰囲気がよくわかる。まだまだテレビの普及しきっていない時期、こういう興行が日本のもっともはなやかなものだったということだろう。

そのステージは一級品とはいえ、やはりMGMのミュージカルのようなものではなく(かなりそれを意識してはいるが)日本的な陳腐なものと言わざるをえない。カラーなので色彩にはこっているが、結局映画的なつなぎができずにカメラが動かないのがなにかやぼったさばかりが目に付く感じなのだろう。

そして、娘をやめさせようとする父親の話が特におもしろくもなく、誰に向けて作られたのかがよくわからない。当時の三人娘のでている映画は似たようなものが多く、子供も楽しめるようにと作った感じがなにかパワー不足の原因という気もする。子供を子供として使うと成功しないということだろう。というか、日本人には、こういうものを作るスピード感というものが全くなかったのだろうが・・・。

だが、江利と雪村の歌はさすがである。特に雪村が部屋で落ち込んで歌う「ハートブレイクホテル」などは、この映画の子供的な部分を吹き飛ばす感じだった。でも、二人共、いまひとつ日本人体型なのが特に画にしても前に出ない理由だろう。江利などはいいかた悪いがちょっと漫画のキャラクターのような感じだものね。(サザエさんの体型ではないよ)

彼女たちの周辺を走る久保や江原など男優陣との恋物語があまり中心に書かれていないのはやはりアイドルだからなのか?いろいろと中途半端なのだ。

それに対比して、宝田明と中田康子のカップルがでてくるが、こちらは大人の感じがでている。ということは、やはりチエミ、いずみのファンはかなり下の層と考えられて作られているのだろう(実際、彼女たちをおばさんになってからしか認識していない私にはよくわからないところである)

そのもっと下の層のためになのか、子役の松島トコ子がでてくる。父親の田中春男に連れられ、宝田の前で「歌を聴いてください」と歌いだすが相手にされない役だ。特に面白くはないのだが、これが数回続くとこの映画の中では印象に残ってしまうから不思議である。

その松島もステージを踏むラストは、舞台を次々にさまざまなジャンルの人がでてくる施行。有島一郎と三木のり平のコントなどいらぬものまででてくる。珍しいのは小坂一也とワゴンマスターズ。ウェスタン歌手時代の彼が自分のバンドで歌う姿はここで初めて見た。かなり貴重だと思う。

悪い言い方をすれば学芸会に毛が生えたような品になってしまった感じであるが、まあこれでも当時の三人娘のファンは楽しめただろうし、カラー映画というのはこれでも客をよんだのではないかと思う。
海外ポップスが日本で受け入れ始めた頃の時代背景を考えながら見たりすれば、少し興味はわく一本である。


スーパー・シック~雪村いづみ オールタイム・ベストアルバム(DVD付)/雪村いづみ
¥6,480
Amazon.co.jp

「Chiemi + Jazz」(チエミ+ジャズ)/江利チエミ
¥2,700
Amazon.co.jp