黄金を抱いて翔べ(2012) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

黄金を抱いて翔べ
2012年 松竹(製作:エイベックス・エンタテインメント、nktエンターテイメント、ハピネット、他)
監督:井筒和幸 主演:妻夫木聡、浅野忠信、チャンミン、西田敏行

高村薫のデビュー作の映画化。井筒監督はなかなかうまく原作を映像化しているが、料理の仕方はスタンダードな感じ。今時映画の感じで尺が長すぎるのもあるし、いまひとつテンポにかける。とはいえ、役者陣はなかなかワイルドでちょっともったいない気もした。音楽をもっと印象的にし、もっと欲望のテンションをあげていかないと、こういう銀行強奪映画は今一つもりあがらない。個人的には好きな題材なだけに凄いもったいない気がした。

久しぶりに大阪に戻った妻夫木は友人(浅野)から銀行の金庫に眠る金塊を強奪する計画を持ちかけられる。銀行のシステムエンジニアの男(桐谷健太)と元エレベーターの保守をやっていた西田をひきこむ。そして、爆弾を作るために北朝鮮のスパイだったチャンミンをひきこみ、計画を知った浅野の弟(溝口淳平)も加わり実行することになる。まずは、ダイナマイトの輸送車を襲い物を奪う。しかし、それによりチャンミンが追われることになる。チャンミンの情報を売ったのは西田だった。そんな中でチャンミンは爆弾作りに没頭し、妻夫木は彼に好意をもっていく。だが、チャンミンを狙う手はゆるまず、浅野の妻と子供が殺される。溝口は死に、妻夫木も重傷を負う中、一度は離れた西田も加わり実行。変電所を先に爆破して停電を起こす事に成功、なんとか金塊を手にするが、西田が死亡。彼が持っていた聖書には写真が入っていた。西田は妻夫木の父だった事がわかる。金塊を車に積み逃げるが、妻夫木は死亡する。そして遺体を川に流す浅野がいた。

昨今の銀行にはあまり現金はないという。そして、セキュリティも強度なことから、昔のような銀行強奪劇はあまり描かれないようになったと言える。景気が悪くても、そういう欲望も減ってしまったということも言えるのだろう。そういう意味では、こういう話は描きずらい時代である。そんな中で、高村薫の小説は社会風刺的な部分を持って成立している感じがする。(その原作自体はよんでいないで映画化されたものを見ただけの意見だが・・・。)そう、大藪晴彦的なハードボイルドか、もう少しファンキーなこの手の映画を好きな私としてはテースト自体が今一の感じがする。

井筒監督はさすがにアクションはしっかりとれているし、役者たちもいい顔で動かしている。だが、原作にすり寄り過ぎているのではないかという気がする。井筒監督自身の解釈や哲学的なものがあまりみえないのだ。イコール、銀行強奪のミッションに対する温度や湿度をあまり感じない。途中でチェンミンを売った西田に対してはそれ相応の皆の怒りなどが有ってもいい気はするのだが、それも弱い気がする。

つまり欲望に対する、彼らのつまらぬ夢や理想がみえてこないのは観客ものせるのが難しいという感じだ。大阪のセピアの街は北朝鮮のスパイというチェンミンの心とうまくシンクロする気はするが、彼が追われる現実もいまひとつ観客にはスリリングではないのは残念でもある。

そう、こういう映画で感動する場合、観客も疲労感を覚えるという事が私にとってもひとつの条件になっている。そういう点では、あまり条件にはあてはまらなかった。たぶんキャラクターが小さい感じでシンクロできないところにあるのだろう。

妻夫木は今回ずいぶんワイルドな感じのいい演技に映ったが、私をシンクロさせるまでには至らなかった。だから、ラストに死んで行ってもむなしさしか残らない。まあ、原作もヒーローを描きたかったわけではないからだろうがしかたないところか・・・。

そして最初にも書いたが尺が長すぎる。アクション映画、それも銀行強盗を描くなら、1時間40分くらいが適当なところだし、そこにキャラの濃い連中が踊りまくる感じが私は好きである。

とはいえ、井筒和幸が数少ない日本で映画を撮ろうとしている監督であることは、ここでも確認はできた。

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