やがて青空(1955) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

やがて青空
1955年 東宝(製作:東京映画)
監督:小田基義 主演:桂木洋子、小林桂樹、太刀川洋一、斎藤達雄

ラストシーンは若者たちがキャンプに向かうシーンで終わる。東宝的な青春映画であり、ホームドラマ。主演の桂木が雑誌記者という設定もこの当時はよくある感じだ。まあ、話は、最初はあまり好きでなかった男女が最後にはくっつくというもので、よくある話である。私的には、脇に出ている、ペットのような扱いの松島トモ子やスポーツコーチで健康的な天津敏、そして人気絶頂期の時の力道山の出演が記憶に残った。

斎藤は妻(沢村貞子)と雑誌記者の長女(桂木)大学生の長男(太刀川)次女(松島トモ子)の5人家族。桂木はある日、雲隠れしていた柔道日本一の男をつかまえたと取材を始めるが彼(小林)はただの友人だった。小林の態度に良い感じをうけない桂木。弟は彼女の取材につきあって小使い稼ぎ。そして、女子学生と知り合う。桂木の元には祖母(浪花千栄子)が見合い写真を持ってくるが、桂木は見もしない。太刀川のボート部の試合がせまっていた。女子学生がたずねてきてあせる太刀川。試合が終わったらキャンプにいく約束をする。そんな試合をみにくる桂木は、弟が負けて女らしいところを小林の前で見せる。そんな小林は九州で教師をやることになる。そこに斎藤が出張で来ていて、チンピラにからまれているところを小林が助ける。小林は柔道の試合のために上京する際、列車でまた斎藤と一緒になり、斎藤は酔い潰れてしまう。小林は斎藤の家に。そこには桂木がいた。そして松島が見合い写真の男と気付く。小林は桂木に試合を観に来いという。どうせ負けるという桂木だったが試合に駆け付け彼を応援するのだった。

桂木洋子という人は美人だが、線が細い人だ。だから、ここで演じているような強気の娘は意外に似会わない感じがする。だからかどうかはわからないが、「醜聞」での病弱な娘のような役が多い印象だ。ここでも最後は病気になるけどね。

その桂木と小林が喧嘩を繰り返しながらも最後にくっつくというよくある話なのだが、やはり桂木の印象が薄く、今一、演技が予定調和のままに進んでいきおもしろくない。そして、弟の太刀川が小使いほしさに変なバイトをやるような話も今一つ破天荒でもなくおもしろみにかける。結果的にはお行儀が良すぎる映画なのだ。

その中で、雑音のようにマンボを歌う松島トモコが凄いテンションでせまってくる。ほとんど人間ではないペットのように動き回るのだが、まあこれだけ印象的なら天才少女といってもいいと思う。ある意味、芦田愛菜よりも凄い少女なのがよくわかる。

あと、あくまでもゲスト出演なのだろう。桂木の取材に力道山が受けるというシーンがある。調べると、この年キングコングをやぶってアジアヘビー級王座になった年である。桂木が「日本のために頑張ってください」といっているが、まだ、世界一へのシナリオができていた半ばであり、彼は本当に日本のヒーローだったのだ。

太刀川周辺の学生の話はあまりおもしろいものはないが、コーチがとても健康的な天津敏なのが、今観ると笑える。彼も最初から悪役ではなかったことがわかるし、結構、こういう明るい芝居もいけたのだと驚く。でも、チームが負けるというのは彼らしい感じはするが・・・。当時の戸田のボートコースがでてくる。

そんな、まあ凡庸な明朗劇は最後に小林が柔道日本一になるところで終わる。車のラジオで聴いていた桂木が駆け付けるのは若大将のような感じであり、東宝映画ならではのラストである。

そして、本当のラストは皆でキャンプに行くシーンである。これもよくあるパターンであり、全体として安心して観れる東宝映画である。