肉体の門
1964年 日活
監督:鈴木清順 主演:野川由美子、宍戸錠、松尾嘉代、石井富子、河西都子
久しぶりに見た。内容的には戦後のパンパンの生態といったもので、そんなに奥深い話ではないが、パワフルな映画である。そして、パンパンの衣装が色分けされている所などは、清順的な世界なのだが、つくりとしてはいたって正攻法な映画である事を確認する。そして、監督は、舞台である戦後の空気感的なものよりも、男女の中の心の綾を描きたかったのだろうなと感じる。
敗戦後の闇市、途方に暮れてさまよう野川がいた。彼女は兄をボルネオで戦死させ、米兵に犯されて、先がみえなかった。そんな闇市で河西にあう。すがるように「仕事はありませんか?」と問う。彼女はパンパンだった。彼女の仲間は松尾、石井、そして富永美沙子だった。彼女は外人とはやらないし、金をとらずに男と寝ることは禁止という掟を作って一緒に暮らしていた。そんな河西が進駐軍を半殺しにした復員兵(宍戸)を拾う。けがもあり、宍戸はそこに住むようになり、彼女たちの生活は宍戸中心に動くようになる。彼がパイン缶が好きだと言えば、みなでそれを買ってくるしまつ。そんな中、富永が男から金をとらずにしたのがばれる。富永は裸にされリンチを受けるが、宍戸が「いいかげんにしろ」という。宍戸は怪我が治り、闇市のヤクザにペニシリンを売るといって商売をする。街にいた、牛を盗み喰ったり、やりたい放題の宍戸に彼女らは意気上がるが、野川は宍戸を愛していく。そして、抱かれ、自分が女になったことがわかる。宍戸は一緒に逃げるかと問う。その光景を河西がみていて、野川はリンチを受けるのだった。宍戸は橋の上で野川を待つが、そこをMPに射殺される。やくざたちは彼がペニシリンなどもっていないことを知る。彼が持っていた日章旗が川に浮かぶのを見て、野川は何が起こったかを知るのだった。
オリンピックの年の映画である。日米の旗が象徴的に映し出される。監督は、何を思いながらこれを撮ったのだろうか?監督は1923年生まれだから、終戦時に22歳である。それなりの思いをこめて作られた映画なのだと思う。そういう、何かパワーはある。そして、木村威夫美術による、セットが圧巻だ。日活撮影所がまさに闇市になっている。
そういう意味では、彼女たちが暮らす廃屋の地下室の世界が暗黒時代という感じにうまく作られている。そして、女たちは、赤、紫、黄、緑、黒と原色の衣装をまとい、ある意味わかりやすく、ある意味象徴的に描かれている。それぞれのキャラをしっかり描ききっているのは清順監督の力量だろう。
そして、監督がその中で描いているのは、宍戸に対する女たちの感情である。どこで一戦を越えるかというスリリングさは今一だが、それぞれに宍戸を恋していく様が結構面白い。
そんな中で、野川は見事に主演をはっている。もともと目力がある人だから、銀幕での存在感は凄いのだが、ここでは肉体的にも凄い存在感である。時代もあり、バストトップはうまくぼかすような裸体表現だが、女を感じさせるリンチシーンは何回見ても迫力がある。こういうのを見ると、監督が「花と蛇」とか撮ったらおもしろかっただろうなと本当に感じるのだが・・・。
宍戸が闇市で進駐軍を半殺しにしたり、最後に、それに撃たれたり、ヤクザを騙したりする部分は、映画としてはそれほどみどころではない。そういう意味では、あまり多重構造になっていないのが、ちょっと私的にはものたりない部分でもある。
牛を殺して解体するシーンはなかなか映画として描くことはないシーンなのでおもしろくはある。
事件が終わり、残った娼婦たちはまた男を狩りに外に出ていく。時代が変わるのはもう一歩先だということだろう。
肉体の門 [DVD]/野川由美子,宍戸錠,和田浩治
