1961年 ニュー東映
監督:深作欣二 主演:千葉真一、曽根晴美、北原しげみ、小林裕子
深作欣二監督のデビュー作、そして千葉真一の初主演作である。60分程度の小品であり、日活の「渡り鳥」に似たものを撮れといわれて撮ったという監督の話が残っている通り、風来坊が事件を解決する話だ。そして、警察はまったく介入しないので、悪者が全部死んで終わりというわかりやすい話である。千葉真一のアクション、そして深作欣二の迫力ある画面作りのルーツがはっきり見ることができる一作である。
赤岩岳にセスナが落ち、パイロットと会社の社長が死んだ。パイロットの妹(北原)が土地を訪ねる。そして、牧場の娘(小林)にあい、世話になる事になる。セスナを探すとマニュキアが残っていた。そこで男たちに襲われる北原だったが、通りかかった千葉が助ける。それを見ていた曽根が千葉になんくせをつけるが、その場は納まる。そんな中、牧場には死んだ社長から権利を譲り受けたと北東観光の社長がおどしにくる。牧場は孤児をひきうけていて亡くなったら困るのだった。そこに千葉が宿を頼みに来る。彼は死んだ社長の会社からたのまれた探偵だったのだ。北東観光にのりこみ探る千葉だった。そこには曽根が用心棒をしていた。そんな中、牛が毒殺されるは、畜舎の火はつけられるは、いやがらせが続く。だが、千葉はマニュキアの持ち主を北東観光の社長の女だとつきとめる。彼女は元スチュワーデスで、セスナを落としてパラシュートで逃げたのだ。そしてセスナの中の死体は替え玉だった。本当の死体を観光会社で見つけてすべてがわかったのだ。そして北原が社長に襲われる中、千葉が現れ、その事実を確認する。そして、壮絶な打ち合い。曽根が何故か味方に付き、一件落着。いなくなった曽根を死んだと思って墓をつくっておがんでいると、曽根があらわれ、勝負がまだついていないというのだった。
話としては、後年のテレビドラマ「キイハンター」にでてくるような話である。わかりやすいし、それなりに楽しめる。だが、こんな事件に警察が一切かかわらないのはおかしいし、偽装殺人をしたのに、本当の死体を処理していなかったというのは間抜けな話である。
まあ、風来坊がきて事件にかかわり、相手の悪者の用心棒がその男に惚れて寝返るというのは、小林旭と宍戸錠のパロディとみればわかりやすい。そして、アクションの動きはこちらの方が上であったりする。当時の千葉真一はどちらかといえばジャニーズ顔なのだが、馬を乗りこなすところや、アクション、銃撃戦の殺陣、すべてにおいて、小林旭よりセンスはいいと思われる。とはいえ、スターとしてのランクの違いで、当時はそうは見なかったとは思うが・・・。
相手役の曽根晴美も、宍戸錠のようなカンカン帽の変なファッションででてきて、役名を「スペードの鉄」といい、トランプをあやつるのも同じである。まあ、賭博のシーンはないから、その腕はよくわからなかったが、完全ないただきだ。
そんな、作り手が萎えるような設定の中でも、深作監督は、十分にキレのいい演出をしている。尺が短いのもあるが、あきることなく見ることができるし、アクションシーンの構図、カット割はただものではない。ただ、これを見ると、任侠映画のようなテンポが好きでなかったのは十分理解できる。ということで、彼が「仁義なき戦い」で一世風靡するには十年かかったわけだ。
演出としては、日本映画的ではないといっていいだろう。だから、後年ハリウッドで「トラ・トラ・トラ」に参加するのはある意味必然的なものだった気もする。
まあ、探偵だから、逮捕しなくていいので全部殺してしまうのだが、千葉の事を好きになる北原は最後にどうなったかは放りっぱなしである。このあたりはスターのランクの違いもあるのかもしれないが、渡り鳥で浅丘ルリ子が見送るような甘い部分は皆無だ。 深作自身がそういうものを好まなかったのかもしれないが・・・。
深作監督の習作と考えれば、十分の良い出来の一作である。ニュー東映での作品は、たぶん予算も少なかったであろうから、このくらい娯楽性があるものはかなりの当たりだったのだとは思う。
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