キッチン
1989年 松竹(製作:光和インターナショナル)
監督:森田芳光 主演:川原亜矢子、松田ケイジ、橋爪功、中島陽典、浜美枝
バブル期の吉本ばななブームにあわせて作られた1本。橋爪功のおかまのお母さん役が評判になったのを覚えている。そして、全般的には好評であった。今、見返すと話は特におもしろみがなく、コクがない。まあ、愚作?を続けた後では爽やかなイメージのある映画である。文学の映画化と言う事もあるのだろうが、映画のテーストは「それから」を現代にした感じ。やはり、何か小津的なものも見える感じがある。というか、こんな話が受ける時代だったのだ。バブルは、日本人をグルメにし、ものに対する考え方を変えた。キッチンが舞台のシーンが多々あり、そこのウンチクが多く語れるのだが、実際、料理をしっかり撮っていないし、そういう部分では演出として40点というところだ。森田監督はバブルではないことがよくわかる?といった感じだ。
川原の一緒に住んでいた祖母が死に、川原はひとりになってさびしかった。そこに僕の家に一緒に住まないかと松田がいってくれる。松田は白タクの運転手で、その母親と言う人(橋爪)は女装した父親だった。そんな不思議なっ空間だったが川原には居心地がよかった。川原は料理学校の助手をやっていた。町で酔った橋爪とその友人(中島)にあっても平気で楽しい川原だったが、学校に松田の彼女らしい女がやってきて文句をいわれ、家を出ることにする。そしてしばらくして中島が川原を訪ねてくる。橋爪が精神を病んで入院したというのだ。お見舞いに行くと元気そうだったが、女の自分と男の自分が混線してるんだという。川原は料理の先生(浜)について外国にいかないかと誘われる。まよっている中、松田の誕生日を松田の家で一緒に祝っていると。橋爪が帰ってくる。担当の先生(四谷シモン)も一緒である。四谷は病院をやめて橋爪と暮らすというのだ。そして、松田と川原も友人から恋人に変わっていった。
そう、「それから」と同様に、話は退屈なのだ。それを音楽と画でみせていく。こういう技ができるあたりは映画監督なのである。映画全体の雰囲気は悪くない。どこという設定はしていないが、ロケは函館だ。路面電車が走るごみごみしていない町はすてきだし、松田の家が高台にあり、夜景がきれいにみえるのもいい雰囲気だ。
川原はこれが映画デビュー。今のすてきなお姉さんではない。オカッパあたまの背の高い、不思議な少女といった感じ。松田もなにか、ちょっと変わっている。そんな二人が主人公なので、橋爪のお母さんが不思議なままでいいのだろう。病院の先生の四谷も、異次元の人である。結果、人間の汗みたいなものを感じない映画であり、結果的には原作のトーンは間違えずに作られたみたいな作品である。川原に嫉妬した女がでてくるが、感情的な彼女だけが現実の人のようだ。そういう世界である。
でも、その奥底に重いテーマがあったりするわけでもなく、松田の家にいっぱい器があったり、化粧品があったりするのは、ただのバブル時代の悪趣味である。吉本ばななは、バブルがあったから受けたのか?ではないのだろうが、結果的にバブルの時期に売れたことで損をした感もある。この映画を見て、小説を読んでみたいとは思わない。
料理人の話であり、「キッチン」というタイトルなのに、その道具が映画の中で観客に印象付けられないのは問題である。やはり、帰ってキッチンという空間を考えなおしたくなるようなものにすべきだったのではないか?監督には、そういう部分はまったく興味ないようだ。唯一、ジュースを作るところはよかった。(「ときめきに死す」でも印象的だったが、森田監督はフルーツ好き?)こういうシーンも、あと何箇所か付け加えれば、カラフルなテーストの映画になったかもしれない。結果的に、中で繰り広げられる料理の話は浮いてしまっている。
確かに、観終わった後には、橋爪の演技だけが光る感じはある。きたないオカマなので、哀愁があるというところがいいのだろう。精神病院の中でのやりとりは、意外に好きだ。だが、私的には、友人のオカマ役の中島陽典の方が愛らしかったが・・。と、こんな事を書いていても気持ち悪くなる。正直、私はオカマが苦手だ。積極的には接触したくはない。(差別感はないのだが、相手のしようがわからない)
久しぶりに観て、雰囲気のみずみずしさだけは覚えていたが、キャラクターの気持ちの軽さや、映画全体の軽さがやはり、好きにはなれない。ただ、「そろばんずく」や「悲しい色やねん」にくらべて、映画の構成がしっかりはしている。だが、初期のような攻撃的な映画を破壊するような遊びがないので、凡庸なのだ。
森田監督は1981年にデビューして、映画界に新風を巻き起こしたが、80年代後半のバブル期に入ると、一気に勢いがなくなる。他の監督を使って「バカヤロー!」のプロデユースなどもしたが、結果的には、前に駒がすすめなかったという感じだ。映画作りもハングリーさが必要なのかもしれない・・・。
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