太陽への脱出(1963) | 日本映画ブログー日本映画と時代の大切な記憶のために

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日本映画をひとりの男が見続けます。映画はタイムマシンです。そういう観点も含め多様な映画を解説していきます。範疇は作られた日本映画全てです。

太陽への脱出

1963年 日活

監督:舛田利雄 主演:石原裕次郎、岩崎加根子、二谷英明、梅野泰靖


石原裕次郎の体格がよくなり、ムードアクションと呼ばれるようになる頃の佳作である。とにかく、この映画の裕次郎はキザで恰好いい。矢作俊彦監督の日活アクション名シーン集「AGAIN」でもこの映画で裕次郎が武器を売るシーンをタイトルバックに使っている。自分を殺し、違う自分として生きる男が、その人生の清算を行う話だ。そして、初めて裕次郎が死ぬシーンが入る映画でもある。主題歌は「骨」。中原中也の詩に曲をつけたものだ。ものがなしい旋律が詩にマッチしてなかなかいい味をだしている。誰もいないクラブで煙草をくわえて、ピアノを弾きがたりすっる裕次郎は実に絵になっている。そして、舞台はタイのバンコク。東南アジアの喧騒が裕次郎の惑う心を演出するいい画になっている。


二谷は新聞記者。日本から東南アジアに武器密輸が行われていて、ベトナムに売りさばかれているらしいという事を知る。そして、現地で死んだ二人の男が浮かび上がる。二谷はこの二人が生きていて、地下で武器を売りさばいているのではないかと推測しバンコクに飛ぶ。バンコクにつくと案内人に劉という名の中国人(裕次郎)を紹介される。二谷はそのサングラスの男に不審を感じる。裕次郎こそ、現地で死の商人と呼ばれる男だった。彼は家にメイド(岩崎)をおいていたが、手も握らずにいた。すべてがばれないようにだ。ある日、同じに地下で仕事をしていた梅野が裕次郎の店に来る。彼は疲れ、日本に帰りたがっていた。ある日、梅野が裕次郎の家に金を盗みに入ると、新聞に帰れの暗号があることを知る。それは彼ら仕事の終了であり、命を狙われるということだった。そんな中、裕次郎は孤独を岩崎でまぎらわす。そして、岩崎も日本人の孤児だと知る。二谷にも裕次郎の正体はばれる。二谷は三人で日本に帰ろうという。梅野は、それにのるが、殺される。裕次郎も追われ重傷を負わされるが、岩崎の介護で助かる。裕次郎は逃げることを決意するがパスポートがなくなっていた、岩崎が焼いたのだ。岩崎は、裕次郎を逃がすために自分を犠牲にし偽パスポートを用意する。そんな岩崎と愛を誓い空港へ。しかし、警察がいて動けないのを、ここも岩崎が助ける。裕次郎は飛行機に乗り、岩崎は自ら命をたつ。帰り、二谷と新聞社に行くと、記事にはできないといわれる。圧力がかかったのだ。裕次郎は、武器工場を爆破に行く。しかし、工場の前で銃殺されるのだった。二谷は、必ず記事にすると誓う。


ラストシーン。裕次郎が多人数が撃った銃弾に倒れる。そして、遺体が運ばれ、おちたサングラスに朝日が映し出される。二谷が「許さない」という思いの中で新しい朝がくるというところだ。結局は、この密売は大きな力のもとに行われているという事だろう。今の原発と同じだ。利用されるものは魂を抜かれる。


テーマは一度は魂を抜かれた男が、優秀な記者にあい、自分の組織の仕打ちに怒りを燃やし、アイデンテティを回復するために散っていく話である。それも、日活アクションとしては珍しく、明るい部分がほとんどないままに裕次郎は散っていく。先にも書いたが、裕次郎の死で終わる彼の映画はこれが初めてである。少し大人の裕次郎という感じで、私はこの映画が結構好きだ。


舞台となるバンコクも、なにか街の雑多さが彼らの心の内のカオスのようにも感じる。そんな裕次郎をいやすのは献身的な岩崎である。カタコトの日本語の現地人という役はなかなか好演である。他にも、高品格が裕次郎の店の部下として現地人を演じているが、これもよい。日本人が中国人や朝鮮人をやると、ちょっと違和感があるが、東南アジア人の役はフィットする。


いわゆる、裕次郎の相手役である芦川いづみや浅丘ルリ子がこの役でないことで、少し違った裕次郎映画になったともいえるが、男っぽさがさらに強調される感じでハードボイルド的な空間がうまくできあがっている。とかく、日活の役者だけの映画は関係が密過ぎて、こういうテーストにはなりにくいのだ。(そこが、よい効果をあらわしてる場合も多々ある)


裕次郎の心の底は先にも書いた、中原中也の詩がすべてを語っているようにも感じられる。


ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きてゐた時の苦労にみちた
あのけがらはしい肉を破つて、
しらじらと雨に洗はれ、
ヌックと出た、骨のさき


ホラホラ、これが僕の骨

見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残つて、
また骨の処にやつて来て、
見てゐるのかしら?


そう、一度は死んだ自分を腑抜けの自分が見つめている感じである。


正直、隠れた大きな罪をあばく話であり、人間が武器と金にあやつられているさまを裕次郎で観客は体現する。ラストの裕次郎の無謀な行動も、納得がいくわけで、むなしすぎるといえばむなしすぎる。


1時間50分の長編であるが、見応えもあるし、あきることはない。舛田利雄の演出も油が乗って来たところであり、私的にはこの映画がムードアクションと呼ばれる幕開けではないかと考えている。


ラスト、タイの空港を警察が取り囲むシーンがあるが、本当の警察が協力しているような感じだ。そういう点でも、タイのロケはリアリティがあり、うまくできている。


そして、こんなテーストの映画を原発をテーマに作ってほしい。最後には電力会社の前でヒーローが死んでいくような・・・。

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