アラブの嵐
1961年 日活
監督:中平康 主演:石原裕次郎、芦川いづみ、小高雄二、シャディア
これは、昨日書いた「闘牛を賭ける男」の公開された次の年の正月映画(12月24日封切り)である。つまり、裕次郎は正月の顔になり、海外ロケの金をかけたものを作ろうという方針になったのであろう。そして、題名の通り、これはエジプトが舞台。後援は今は亡き、パン・アメリカン航空である。(日本の海外ロケで一番使われているものと思われる)。まあ、ピラミッドをバックの裕次郎の活躍というのを考えればおもしろそうな話だが。ここででてくる裕次郎は、どちらかというと内弁慶なボンボン役で、無理やり海外に飛び、無謀な旅行をするという筋だて、ちょっと、さえない裕次郎の珍道中という感じのコメディアクションなのである。とはいえ、バックには独立闘争の話があり、裕次郎がロバにまたがるシーンを見ると「アラビアのロレンス」のエッセンスが入っている。と思い調べると、有名なあの映画の公開は1962年(日本公開1963年)である。まあ、パクリではなさそうだ。そして、あの映画がこの映画をパクッたということも決してないとは思う。
大会社の御曹司の裕次郎は、ふがいない自分を知り、祖父の遺言に従い、執拗にこばんだ外国旅行に出ることに。まずは、すぐ飛ぶやつといってベイルートに向かうが、英語ができずビールもたのめない。隣に座った芦川がフォローしてくれるが、素直ではない。ベイルートにつくと、会社が手をまわしたらしく迎えがいっぱい。それも拒み、トランジットでカイロにいく。そこで、チケットを買ううちに鞄がすりかわってしまう。そして裕次郎の隣にいた人が死ぬ。裕次郎は追われるが、気づかない。その飛行機には芦川もいた。カイロにつくと日本人(小高)が面倒をみてくれてピラミッドにいく。そこで無理やりピラミッド昇りをさせられる。小高は裕次郎の金を盗もうとしていたのだ。そこは失敗して、飲み屋にいく。そこには芦川がいた。彼女は戦争で別れた父を捜していた。そこには小高が金を借りていた女(シャディア)がいて、その仲間が裕次郎の前で殺される。シャディは独立を企てるナシャナリストで帝国主義のグループに追われていた。そして、裕次郎のバッグにはその秘密が書いてあるフィルムの入ったペンダントが入っていたのだ。ペンダントは裕次郎の元に残り、裕次郎はみんなに追われる。芦川は父が死んだという事を老医師から知る。そして、追われてきた裕次郎がそこにあらわれる。そこにつれてきたのは、老医師だった。彼は本当は芦川の父だったのだ。帝国主義者がシャディアたちを囲む中、警察がやってきてペンダントはシャディアの元に戻る。そして、帰国の途についた裕次郎たちの元に独立のニュースがとどく。空港の脇には、老医師が芦川を見送っていた。
「狂った果実」を撮った、中平康監督とは思えない、変な映画である。コメディも撮れる監督なのはわかっているが、この企画が通る状況も今一わかりにくいという感じの作品である。まあ、現地の役者を使っているので、向こうのOKもとらなければいけなかったのだろうが、裕次郎映画全体を考えても、不思議な映画のひとつである。
昨日書いた「闘牛に賭ける男」は字幕の映画だったが、こちらは全編吹き替え、それも向こうで同録したと思われる音が残った上から、吹き替えの音をかぶせているので、ちょっと聞きとりずかかったりもする。まあ、時間をかけずにとった映画であろう、そのパワーだけが画面に感じられる。
で、みんなが追いかける、いや裕次郎が追いかけられる原因になるのはペンダントの中のフィルムであるが、その内容は最後までわからないし、細部に関してはあまり細かく描かれた映画ではない。そう、政治問題が話の芯になっているのに、裕次郎がただの観光客でしかないので、ドリフターズの映画みたいなテーストなのである。まあ、裕次郎、こういうトッポい役もできるからいいのだが・・・。
芦川はまじめに父親を捜しているのが、何かバカみたいな感じにもなっている。彼女の周りに関する話はシナリオ的にはまじめに描かれているのだが、どうも最後に、本当の父が隠れたまま彼女を見送るというラストも締りがない感じである。
なんか、カイロで撮られた追いかけ映画の上に、CGで裕次郎と芦川をあてはめたみたいなテーストの映画である。中平監督は、もうこの頃から出来、不出来の差が激しい監督になっている。まあ、海外ロケというのが計算通りにはいかなかったのだろうが、 中途半端感が強い。
ピラミッドにスフインクス。それをバックに裕次郎がいるというところで観客は楽しめたのかもしれないが、裕次郎がただのピエロ状態では、ちょっとかわいそうな映画である。正月映画で真冬にこの風景を見て、観客は温かい気持ちになったかもしれませんが・・・。
なかなか裕次郎の海外ロケものは時代もあるのでしょうが、成功しないという感じではあります。それは日本の脚本家がまず海外を知らなかったということが大きいのかもしれないが、ちょっと残念な部分ではあります。
ただ、この映画の芦川いづみは、実にチャーミングだ。中平監督の撮る芦川はほぼまちがいなく美しい。これは中平監督自身が彼女を気にいっていたという事なのだろうと思う。ちなみに私がその中で最も芦川を美しくとらえていると思うのは「あいつと私」である。
まあ、その後も日本映画で中近東にロケに行って成功した作品はない。それを考えれば、この時代によくやったといえるのかもしれないが・・・。
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