ハワイ・マレー沖海戦
1942年 映画配給社(製作:東宝)
監督:山本嘉次郎 主演:伊東薫、藤田進、原節子、大河内傳次郎、英百合子
今日は真珠湾攻撃で日本がアメリカに神国の力をみせつけた日?である。ということで、その攻撃の模様を最初に映画化したこの作品について語る。この映画、攻撃のあった一年後の12月公開である。まさしく、戦意高揚のために、華々しい映画を作ろうとしたのか?まあ、結果的には海軍と言うところがどういうところで、お国のために働く精神論を語った映画といっていいだろう。そして、この映画がいまだに語られる国策映画である理由は、円谷英二の特撮にある。戦後はゴジラをはじめとして名声をうける円谷であるが、その原点はここにあるといっていい。そして、緻密な仕事は見事であり、その部分だけ見ても意味ある映画と言っていいだろう。
伊東は航空機の仕事に携わりたいといって、予科練に入る。厳しい訓練の中、成長する伊東。そして、次は飛行訓練になり、実戦配属になる。12月初旬、奇襲攻撃のために乗り込む伊東。ハワイに近づくと、ラジオからはダンスの音楽が流れていた。そこに奇襲攻撃を仕掛ける隊員たち。無事、任務完了。そして、その2日後、マレー沖の攻撃でも敵戦艦を撃沈し、華々しい成果を上げたのであった。
当時の日本軍としては映画を戦意高揚に使えることはわかっていて、こういう映画をとらせたわけである。そして、たぶん、作戦が成功するごとにそれをつみあげて、勢いと精神論で乗り切れると思いこんだのだろう。この映画には、その気持ちばかりが良く見える。
当時の予科練や、軍隊の中がでてくるが、体罰のような部分はやはりでてこない。あくまでも精神論で戦争への思いを説いている。予科練ではスポーツがその中心にあったこともよくわかる。敵国スポーツであるラグビーなどをやっているのはちょっと意外だ。相撲では技で勝つと怒られる。あくまでも力で押せというのだ。そう、その中心にある言葉は「頑張る」ということらしい。戦略が欠如するのも無理はない。
最近も、徴兵制復活と言う方がよくいるが、ある意味、軍隊は頭を一体化することで成り立つ。集団行動としてはそれはメリットがあるが、結果的には多様な能力や技術を封じ込める結果になり、私は危険だと思う。それでなくても、日本は教育がなにか違う具合になっているのだから・・・。
そう、この映画の中にはすべてではないが、日本軍の思想がよくでている。あくまでも、日本は神国であり、その赤子は特別な力を持っているようである。その理論が、この映画内にほとばしっているのだ。母親でさえ、もう自分のむすこではないというようなことを言う。まあ、理想の国民が描かれているわけだ。
伊東の姉役で原節子がでている。当時22歳である。一番綺麗なときなのかもしれない。彼女が女優としてある意味不幸だったのは、一番旬な時間が戦争の時期にダブっている事だろう。この時期の彼女だったらさまざまな役ができたろうに、本当にもんぺをはいた役しかできなかったのは残念だ。
そして、結構、前触れもなく真珠湾攻撃の日になる。まだ、戦時中であり、細かい作戦や戦略などは作り手には情報がなかったのだろう。細かいことは抜きにハワイに向かっていく。そう、戦争に理由はいらないのだ。世界を支配するためにアメリカをたたかなきゃいけないようだ・・・。ただ、闘うのみである。この向かう船の中で相手の戦艦を形から言い当てるゲームをしている。なにかアメリカをなめきってる感が凄い。当事者たちはこんなだったのだろうかと思うとうさんくさい。リスクを考えない世界ほど危険なものはないのだ。
そして、攻撃シーンはミニチュアでの爆撃と実写の画をうまく混ぜながら、なかなかの迫力である。円谷がとった部分の撮影のアングルはそんな多くないのだが、編集の妙でかなりの迫力がある。まだ、これだけ細かい特撮が許された時代だったという事でもある。とはいえ、やはり、ミニチュアでの水の粒は大きいのでよくわかる。ただ、それでも、つなぎがうまいので当時見た人もそれほど気にはならなかったのではないか?現代のCGを使ったものと、どっちをが好きかと言えばこちらである。そう、円谷は頑張るというよりは技術でものを考えた人である。どういう思いでこの映画を作っていたのだろうかとは思うが、まあ、オタクの世界ですよね。
真珠湾の後に付けたしのようにマレー沖の攻撃が入るが、こちらは爆撃機の中のシーンが多い。まったく撮り方や見せ方が違うのは演出も違うのかもしれない。
そして、ラスト、突然、軍艦マーチが流れる中、連合艦隊の威風堂々たる姿が映し出され、映画は終わる。そういえば、映画の主人公だった伊東も途中でいなくなってしまったようである。
しかし、戦争に何の徳があるのかは、この映画を見てもよくはわからないのがミソである。最後に繰り返すが、今日は真珠湾攻撃の日である。みなさん、日本がどこの国と戦争したか知っていますか?
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