ドライ夫人と亭主関白
1957年 新東宝(製作:富士映画)
監督:近江敏郎 主演:高島忠夫、前田通子、坊屋三郎、宮城千賀子
新東宝の系列の富士映画が作ったライトコメディである。富士映画は現在の大蔵映画の前進である。だから、大蔵貢の弟でもある近江敏郎が監督しているのだ。そしてこの作品は原作も彼がやっている。そして、音楽担当が古賀政夫で出演もしている。このあたりは、さまざまなコネクションのなせる技であろう。作品自体は陳腐だが、共演者がにぎやかで興味深いものがある。そんな中でクレジットでは高島と前田が主役になっているが、実際の話の中心は坊屋三郎である。まあ、宣伝素材をみるとそんな風にはみえないから、詐欺的行為といっていいだろう。新東宝の宣伝はそういうところもなかなかソツがないのだ。ただ、前田のプロポーションが見られるサービスカットは多々でてくるから、見た方は満足していったのかもしれない
フジ洋品店は宮城でもっていた。夫の坊屋は甲斐性なしで尻に敷かれっぱなし。お出かけのキスもおあずけ状態。その上に住む親せきの高島もうれない歌手で、妻の前田はファッションモデルで稼いでいて頭が上がらない。坊屋は宮城の通う「真平教」で字を練習しろと言われ書道家(コロムビアトップライト)のところで役に立たない書道を覚えてきたりして宮城にどやされる。そんな中で坊屋のじいやがやってくる。祖先の埋蔵金があるという話を持ってくる。喜んで前祝いにキャバレーにいく坊屋夫婦と高島夫婦だった。しかしヤクザにからまれる。その時、助けてくれたのは陸軍時代の上司(並木一路)だった。彼はドーム球場を作る計画があるとホラを吹き、古賀政男と友達だという。それを聞いた坊屋は高島を古賀にあわせろと頼む。調子のいい並木は古賀のところにむりやり友達面して入り込み高島に歌を歌わせる。古賀は気にいり、高島は有名になる。しかし、その夜、並木は家にあるめぼしいものを盗み立ち去った。坊屋は埋蔵金を捜せと出かける。そして、そこには小番の山が。坊屋は金属会社の社長になる。邸宅が立ち、優しくつかえる宮城と前田がいた。
テーストとしては、当時の安いテレビドラマといった感じである。まだまだ家庭にテレビがない時である。こんな作品でも十分楽しめたのであろう。横町のたわいない話だ。 しかし、宮城や前田の職場は華やかである。冒頭すぐに前田の出演するファションショーがでてくる。最初に近江敏郎が唄っているという監督めだちほうだいの映画なのが凄いが、当時はこのショーシーンだけでも、映画的な価値はあったのだろう。
前田は控室でヘアメークをしてもらっていて、「山野先生にじかにやっていただけて光栄」というセリフをいっている。これが山野愛子のようだ。そして、ショーはカジュアルなモードから水着ショーまでついている。水着はゴム素材で着心地抜群だそうだ。ワンピースだが、前田が着るとなかなかセクシーである。まあ、前田を見に来た人にはこれでOKだろう。
前田はあと、パジャマをきて足を延ばすシーンとショーパンで美容体操するシーンを演じている。はっきりいって、前田の持ち場は演技よりも、男の目をひく役割である。
とはいえ、これがないと、坊屋と宮城の夫婦喧嘩くらいしかみるところがないので、必要不可欠なシーンなのかもしれない。宮城と坊屋の夫婦喧嘩は、皿を割り放題割った坊屋を宮城が布団蒸しにすると、坊屋がぺちゃんこになるという子供マンガ的なものである。
それよりも、柳亭痴楽や八波むと志やコロムビアトップライトという喜劇人がみられる方が今みると貴重である。とはいえ、特におもしろいギャグではないが・・。
古賀政男は、しっかりセリフもあり、結構楽しんで芝居をしている。近江のコネだろうが、なかなか人柄がみえて楽しいシーンである。高島はそこで一曲歌うシーンがある。彼の役名は五橋日也という。そんな脚本なのだ。
詐欺師で泥棒役の並木はドーム球場の話をするが、アメリカにアストロドームができたのが1965年だから、まだまだ突拍子もない発想だったようだ。そこで、高島が「ホームランがでたらどうするんだ」という疑問を投げると、並木は「ふたがあく」といっている。ま、みんなよくわかっていないようだ。
ラスト、坊屋が社長になって秘書の面接をするシーンがあるが、ここがおもしろい。3人の面接をやるのだが、皆扮装を変えた同じ女がでてくるのだ。役者名はわからないが、なかなかの役者である。田舎者からマダムまで演じられるという器用さとあつかましいおもしろさを感じた。
結果的には、たいした映画ではないが、さまざまな客を笑わせようとする近江監督の気持ちは伝わってくる一遍ではある。
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