日本橋
1956年 大映
監督:市川崑 主演:淡島千景、山本富士子、若尾文子、品川隆二、柳永二郎
市川崑の初のカラー作品である。照明とかに、結構凝っている。色は赤基調で、カラーを意識した感じはある。そして原作が泉鏡花ということもあり、セットは作りもののように見せている。つまり舞台劇をどう映画としてつなぐかというテーストである。五所平之助のように、長回しでじっくり芝居を見せていくのではなく、カットを紡ぎながら映画的世界を構築しようとしている。結果的に、それが話をわかりにくくしている感じなのだが、市川崑の映画として見ると実験的な部分も多くおもしろい。
淡島と若尾は同じ置き屋で、お化けのでるという家に引っ越したところだった。淡島は別の置き屋の山本に捨てられた男を引き寄せて当てつけにしていた。2人の女と関係し、今は乞食になっている柳永が置き屋の周囲をうろついていた。品川は山本に愛の告白をしていた。そして、山本は旦那も子供もある身なので振る。品川は橋の袂で物思いにふけるところを巡査(船越英二)に尋問される。それを見て助けたのは淡島だった。その後淡島の元に巡査がきて品川が立派な人だといっていく。淡島は品川を思う。しかし、近づくのは柳永みたいな男だった。柳永は自分の子供を山本の家の近くに捨てる。山本はその子を育てる。柳永は品川に淡島ときれてくれとたのむ。品川は仕事をやめ巡礼にでる。そんな中、品川を思う淡島は気が違う。そして、山本の家が火事になる。残されていた子供と母親を助けたのは柳永だった。柳永は火事場で刀を拾い、淡島の元に。入ると刺すが、それは若尾だった。それを見た淡島は気が戻る。そして毒を飲むのだった。駆け付けた山本に家を継いでくれと言う淡島だった。
冒頭、引っ越した家にはお化けが出るという説明から始まる。9人の芸者がぶきみに移されタイトルがでる。まるで怪談映画のようである。監督は、最初から正攻法の泉鏡花の映画を撮ろうとはしていない。 しかし、そのことで、やはり全体の話の枠が観客に見えずらい。淡島と若尾の確執。品川や柳永の思い。そんな大人の男女を見守る若尾の目など、心理的な部分をしっかり描かないと、鏡花の話はお涙頂戴にはならない。そういう点では、市川演出は失敗である。やはり、五所平之助か誰かが撮った方が安心して見る事ができるといったところであろう。
淡島が気が違ったところで、家の中で飛ばしていた扇子が外に落ち、山本が通りかかりそれを拾うというようなシーンがあるが、映画的にカット割してあるが、そういう部分が話にリンクしていかないから、観客は心理的にひきこまれない。すべてのカットが下手だというわけではないが、どうも話の筋とのバランスが悪いのだ。映画技法が舞台装置のようにはたらいていないということである。
淡島の演技はなかなか締まっている。それに比べ山本には魅力をあまり感じない。ここでの山本は綺麗なだけである。対峙するものが、同じエネルギーを持っていないのは、やはり観客から見て不満になる。彼らを見つめる若尾もかわいいがそれだけである。途中、イガグリ坊主の川口にいじめられるシーンがあるが、何かあってもなくてもいいシーンのようだ。
品川隆二はいつもはどちらかというとクセがある男の役が多いが、ここでは正攻法の二枚目で、なかなかいい味を出している。彼が淡島や山本と絡む部分はこの映画の中で一番バランスがいい。
結果的に市川監督自身が、この話をおもしろいと思っていないのではないか?話を見せるというよりは、自分の映画の実験場のようにしている感がある。舞台のようなセットの中で奥行きをかんじさせる撮り方は、凄い映画的だし、ショットショットで素晴らしいものも多い。市川崑を語る上では、話が尽きない感じの部分もある映画ではあるが、やはり女の情念と市川崑というのが、はまらない気がする。
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