夫と息子がテレビでスポーツを観ていたから

私は自分の寝ている部屋で

夫が寝室に来るのを待っていました


1時間半経って、漸く夫が部屋に来ました

足音で分かった


私は部屋を出ると夫がちょうど

寝室のドアを開けるところでした


「少し話したいの」

そう言うと、夫の眉間がほんの少しだけ動いたの

心の中が透けて見えた

(嫌だ。と言う事なのだろう)

そう理解できました


だけど私は心に決めていたから

今日話して駄目なら、もう、全て諦める

話せなくてもそれは駄目だったと言うのと同じこと


多分、夫は私のその時の表情で

私の何かがいつもと違う事を感じたのかもしれません


小さな声で

「入って」と、言い

先に私を寝室に入れた


そのまま自分はまたリビングに戻って

戻って来た時には手にグラス2つと水を持っていました


私が薬を飲んだり

話し合いの途中で錯乱した時には

いつも「落ち着いて」と言って水を飲ませました

だからあの時も

きっと私がおかしくなると思って予め用意したのだと思う


だけど、その日の私は違う

離婚したい。とカフェで夫に離婚届を渡した

別居した時と同じように

覚悟が決まっていたから

いつもの、夫の顔色を見て

おどおどしながら

泣きながら話す私ではありませんでした


「なに?」と夫から言ってきました


今日は最後に話したいことがあって

どうしても聞いてもらいたいの

最後まで怒らないで聞いて欲しいの

と前置きしました


もうこれでこんな話をするのは最後にするね

と言ってから始めました


私は夫と知り合って結婚して幸せだったこと

子供がいる事に弊害を感じたことは一度もなかったこと

一緒に暮らして楽しかった

息子と仲良く出来て、血の繋がりがない親子と知らないママ達から羨ましがられるのが嬉しかったこと

お母さんって、呼ばれるのも嬉しい事

家族の一員になりたくて一生懸命頑張ってきた事

でもそれは多少無理もしていたこと

だけどそれを苦には思わないって自分の中の不思議があったこと

そして、夫をとっても愛していた

別居を解消してからはこんな事になってしまって

何が悪いのか未だにわからない

初めは混乱した

あの人が言っていたように

家のことをさせる為に私を利用してるのかな?って思ってる

だけどそれでも私が夫を好きだからそれでもいいって

一人で頑張ってきたけれど

もう頑張れそうもない

頑張っても意味がないと気が付いた

意味って言うのは

報われないってこと

私を好きにはなってくれないってことに気がついちゃった

もしかしたら私の頑張り方が間違っていたのかもしれないし

それで嫌われたのかもしれない

もう疲れちゃって

このままだと、私はこの家の人に迷惑をかける事になるから

やっぱり離れなくちゃと思ってる

と夫にゆっくりできるだけ穏やかに聞こえるように話しました


いつもは泣きながら

口説くように喚く私とは違う私に

夫はやっぱり

何か違うと感じたのでしょう


「お前、また飲んでないよな?」と言ってきました

安定して話す私に違和感を感じて言ったのです


確か私は首を振りました

夫が言いました


「スミレは悪くない。全ては俺の犯したことが原因で、お前をこんなにしたのも俺だ」と言った


そして、五分くらい沈黙

夫は水を飲んでただベッドに座ってる


私はもう一つ言いたいことがあったから

夫にまた、ゆっくり話しました


子供が欲しかったから結婚したんじゃないの

(夫にお前は子供が持ちたくて俺と結婚した。周りが母親になったから焦って俺と結婚したんだろ?と不倫が分かった頃に言われたのです)

好きな人と結婚できて、好きな人の子供が欲しいと思ってた

母になりたいから父が誰でも良いなんて思ったことなんかない

その為に結婚したんじゃない

ここで一緒に寝たいって言ったのも

妊娠したいからじゃないよ

子どもは欲しいけど

私はきっともう母親にはなれないの

解ってるでしょう?

(娘の時に医師に今後はもう難しいと言われたんです)

あんなに離婚はしないと言った人だから

私のことを思ってくれていると信じて戻ってきたから、私に触らないのが不思議だった

浮気する前はこんな事なかったから

浮気でなくて本気だったのかな?私が別れさせてしまったから逆恨みから憎まれてるのかな?って思うところもある

夫の気持ちを確かめたかった

だから恥ずかしくても自分から隣に寄り添って寝た

だけど拒絶されてショックだった

愛されてないって実感してる

それでも時々、前みたいに優しいところが見えるから

また混乱しちゃうの繰り返しで心が疲れた

ハッキリ言うのはとっても恥ずかしいけど言うね

〇〇さんとしたい

裸で抱き合いたい

キスして欲しい

前みたいに愛されてるって実感したい

気持ちよくなりたい前に

愛されてるって安心したかったの

〇〇さん(夫)が最後に見たのも触ったのも

私じゃない

〇〇さん(アズ)なのが私には耐えられなかったの


ここまで、時に少し泣きそうになりながら

その時は言葉が詰まって

少し沈黙となり

深呼吸してまた話す

そんな感じで夫に伝えた


ここまで言うのが怖かった

また嫌な顔をしたり

あのため息を聞かされるかもと思ったし

もしかしたら、部屋から出されるかもって

とても怖かったです


だから話し終えたあと

黙って聞いていた夫に

妙な気持ちになった、そして

全て言えた自分にホッとして

目から涙がポタポタたくさん落ちてきた


夫は私にティッシュを渡してきました

だけど何も言わないのです

一言も話さない

ただ私のことは見ていました

いつも話すときには、私の目を見ずにいる人が

この時には話している私をじっと見ていたのが印象に深く残っています


そのまままた沈黙の時間が続きました


私の想いは伝わった

そう思いました

伝わったと、手応えはあった

だけど、その気持ちは汲んで貰えない


そんな風に思ったので諦めなくちゃ駄目な時が来たと落胆しました

そして同時に、はい。もう終わり。

頭の中でハッキリと諦めの時。

実行しなくちゃ、と思ったのです。


ベッドから立ち上がって自分の寝る部屋に

戻ろうとしました


2、3歩歩いたら夫が

「どこに行くの?」と言いました

「向こう。もう寝るね。おやすみなさい」

そう言ったら

「ここで、、、」と言うのです


そして夫もベットから立ち上がって

私に言いました


「脱いで」


え?と思いました

何?って意味が解らなかった

黙って夫の方を見て立っていたら

夫がベッドの布団を捲って座った

そしてまた私に

「ここに来て、着てるもの脱いで」と言って

私の腕を掴んで座る自分の前に立たせました


そこで理解できた

そして物凄く動揺しました

何が起きるの?と怖くもありました

脱いで。なんて言われたことない

こんなに明るい部屋で

夫の前で自分から服を脱いで見せたこともなかったです

恥ずかしくてたまりません

だけど、これを逃したら

もたもたして夫の気が変わったら

そう思うと自然とボタンを外している私がいました

信じられないくらいに恥ずかしい

そして夫はそんな私をじっと見てる


下着も全て外して全裸になった

夫が私の手を取って「おいで」と言った


ベッドに横になると私の上に来た夫は私を見ました

ずっと目が合ったまま

不倫がわかる前に見た光景でした


「好きなの」と自然と口に出てしまい

言ってからハッとした

だけど夫は、私のそれに何も言わずにキスをしました

本当に本当に久々にキスをしました

とても長いキスだった

それはほっぺただったり目だっりおデコにも来ました

嬉しかった、とても


だけど、信じられないかもしれないけれど

その日は夫と交わることはありませんでした


夫は長いキスのあと私の体をずっと触っていました

それは本当に長い時間

その間、夫の物が私の太腿に当たって感じたことは


夫は私に触れても反応していなかった