ちょっと趣味の読書の話します
あらすじ
高校卒業から10年。クラス会で再会した仲間たちの話題は、人気女優となったクラスメートの「キョウコ」のこと。彼女を次のクラス会に呼び出そうと目論む常連メンバーだが、彼女に近づこうと画策することで思春期の幼く残酷だった“教室の悪意”が、まるでかさぶたを剥がすようにじわじわと甦り、次第に一人また一人と計画の舞台を降りてゆく……。28歳、大人になった男女5人の切迫した心情をそれぞれの視点から描き、深い共感を呼び起こす。圧巻の長篇心理サスペンス。
女って怖い
この物語の登場人物たちは、
ある者は見目麗しく、ある者は仕事で成功を納め、あたかも成功者のように見えます。
上京した自分たちを誇り、地元に残っている連中を「地元組」と、どこか見下し、さりげな〜く自身を誇示します。
ところが、蓋を開けてみれば、成功の事実はハッタリで誇張ばかり、高校時代から今も変わらず劣等感の塊。
自分より下(だと思っている)の高校の同級生に、自分たちの素晴らしさを見せつけるために毎年同窓会を開き、自身の優位性を保っているのです。
キョウコに再会して
昔、教室の女王様だったキョウコーーー
彼女が今は大女優ーーー
そんな登場人物たちが大女優・キョウコに会いたい理由は様々ですが、どれも利己的です。
そして、各々がキョウコと再会し、
その後、同窓会の案内を出そうと連絡したところ、連絡が取れなくなっていくのです…
…おっと、これは事件の予感?
あ、次ネタバレです
ネタバレ
肝心な叙述トリックがあるのですが、私はそこはあんまり驚きませんでした。カタカナ表記されていたので、確実にキョウコちゃんは2人いるな…と。
でも、この小説が私の心を揺さぶったのは
かつて女王だった響子、
陥落したと笑い物にされていた響子が自分の居場所に自信を持っていたこと
みんなが散々馬鹿にしていた響子は、誰よりも自分の今を愛していました。
近年、SNS時代になって顕著ですが、
どんな時代でも人は自分の優位性を他人に自慢せずにはいられない生き物です。
中にはそうでない人もいますが、
それは本当に自分を持った強い人か、卑屈な人の2択な気がします。(私は後者です、戦わなければ負けない理論の人です)
そして、もう一人のキョウコ。
彼女もまた自分を愛し、自信を持っているからこそ、他人を卑下しないのです
そんな裏表のないキョウコに認められることで、
登場人物たちは自分を誇示することの馬鹿馬鹿しさに気がつき、優位性の誇示(=同窓会の出席)を捨てるのでした。
・・・・・
なんて、爽やかな終わり方なんだ…!て思いました(爽やかで済まない部分もあるけど)
おそらく、全員が全員こうは感じないんだろうなと、思います。
シンプルに女は怖いし、ドロドロしてるって感想になる人も居ると思うんですけど、それはおそらく当事者になったことがない人だけですよね。
己の劣等感、醜さを知らない人。でも、それはとっても幸せなことだと思います
30代入っても、この苦しさからは抜けられないので、これは永遠の人間のテーマなんだと思います。
華だけの生活なんてないんです、
みんなどこかに闇を抱えている、
自分だけが子供のことで悩んで苦しんでるなんて思ってはいけないと思うんですが、結局ウジウジです