朝、四時頃目が覚めた。

公園にはまだ誰もいなかった。

公園の横の坂道を登って堤防の上から朝もやにけぶる武庫川を眺めた。

 

水はとうとうと流れすっかり夜が明けた夏空にに白い雲がぽかりぽかり浮かんでいた。

省三は一時間近くも堤防から武庫川の流れを見続けていた。

 

やがて公園の方からイチ!ニイ!サン!と元気な声が聞こえてきた。

「ジャイアンツだ!」

省三は大きく叫ぶと堤防の坂道を公園の方に駆け下りて行った。

 

揃いのウインドブレーカーを着た選手たちが早朝のトレ-ニングを始めたところだった。

省三は公園入り口のベンチに座って知ってる選手はいないか懸命に探したがウインドブレーカーで背番号もわからずだんだん焦ってきた。

 

やがて隼人が色紙とサインペンを持ってキョロキョロしている省三の横に座った。

「省ちゃんおはよう!このベンチに座っていると選手たちが帰るとき横を通るからサインをもらえるよ」

 

選手達は一時間近くトレーニングしてぱらぱらと弥生荘に帰りはじめた。

「ほら川上さんが来たよ」

隼人に背中を押され省三はあわてて「サインお願いします」とテレビでよく見る川上選手に近ずいて頭を下げながら色紙とサインペンを渡した。

川上選手は黙って立ったまま色紙にサインしてくれた。

 

「別所さんがきたよ」隼人に声をかけられて省三は「サインお願いします」と言いながら色紙とサインペンを渡した。

初めての経験でドギマギしながらも数人の有名選手のサインをもらえた。

 

隼人は省三の貰ったサインの色紙の裏に鉛筆で選手の名前を書いていった。

「皆独特のサインするからこうして裏に名前を着ておくとだれのサインかわかるだろ」

 

隼人は省三にウインクしながら言った。