もう母は年を越せないのではないかと覚悟をした翌朝、ベッド上の様子を見に行くと・・・
なんと母ははっきりと目を開けて視線を動かしていた。
声をかけるときちんとこちらを見てきてしっかりと目が合う。
私が顔を動かすとそれを目で追う。
声は出せないが何か言いたそうだった。
さらに翌日、何か水分が取れるのではないかと誤嚥しないようベッドを起こしスポイトでお水とトマトジュースを数滴口に入れる。
子供の頃風邪をひいたときに母がリンゴをすって食べさせてくれたのを思い出した妹が小さなスプーンですりリンゴの汁を口に運ぶと口を開け、しっかりと飲み込んだ。
その日はベッドの背を起こした姿勢のまま1時間程すごし、寝ている時とは視界が違うのが嬉しいのか部屋の隅々をキョロキョロと眺めていた。
そして「左手を握ると私たちが子供の頃のみたいに”指相撲”をしかけてくるよ!」と妹が驚いたので私も試してみると強い力で指相撲をしかけられた。
声も出ず無表情だが確かにひょうきんで面白かった母を感じた。
昨日までもう残り少ないのではないかと思っていた母の脳に一体何が起きたのか。
恐らく数日絶食していたことでむくみが取れて脳の圧迫が薄らいだのではないかと素人考えだが思った。
次の医師による往診の際聞いてみよう。
もう母と意思疎通は出来ないと思っていた父はこのまま良くなるのではないかと期待しているようだった。
期待はしすぎないでとはさすがに父には言えなかったし、私たち姉妹もやはり母に反応があることが嬉しかった。
【父のメモ】
12/23
朝2回オムツ交換。足、特に右足をマッサージする。若干足に反応あり。左手を握ってやると目の輝きが増す。
15時オムツ交換
17時右足マッサージする。手足を少し動かして意思表示をしているように思われる。
12/24
03時オムツ交換、自力で右足を折って寝ていた。
07時背中を70度程度の起こし、朝食に水10滴3回、トマトジュース6滴おいしそうに食べた。すりリンゴ小さじ5回美味しそうに食べた。
08時姿勢そのまま、周りを首を振って見回す。寒くないかと呼びかけると振り向く。オムツ交換。右腕の筋が突っ張り気味で指先が微かに震えていることに気づく。右足のふくらはぎをマッサージすると嫌なのか左足で邪魔する。飲み食いを強いないでこのまま穏やかに終焉を迎えさせるために医師の勧め通り少し水を口に湿す程度で過ごさねばならない。とあるが、さらに元気になった場合、少し寿命を延ばす方法を先生に相談してみる必要がある。