海から遠く離れた
大陸の内陸部に この国はあった
劉(りゅう)という名のこの国は
国土の半分は砂漠に覆われており
その他の緑地は
周りを高い山々で囲まれていた為
大国との国境を複数跨いでいたとはいえ
古くから 侵略の危機に晒されながらも
優秀な騎馬隊と策略で国を守っていた
美しい国だった
夏の砂漠地帯や
冬の寒さなど自然は厳しかったが
春になれば緑地帯は緑に覆われ
羊たちはのんびりと草を食み
野生の馬は自由に駆け回り
その外で繰り広げられる
国土の奪い合いの殺戮など
全く無縁の世界だった
国王の名はバートル(英雄)と言い
優秀な部下と 美しい妻ボルグ(泉)があった
妻との間には1人の王子がいた
子どもは1人しか授からなかったが
妻を深く愛していた国王は妾を取る事もせず
王子は健やかに成長し
国民もそんな国王一族に守られ
幸せに暮らしていた
王子は名をバル(虎)と言い
幼い頃から 勇気と慈愛に満ちた
時期国王となるに相応しい王子だった
王子バルには幼い頃から共に育った
チョルモン(明けの明星)という名の
同い年の幼なじみがいた
チョルモンの父アムグラン(安寧)は
学者であり
国王バートルの右腕でもあった
チョルモンは物心付く前に母を亡くしており
王子バルの母ボルグは そんなチョルモンにも
惜しみ無い愛情を注いだ
バルとチョルモンの2人は兄弟の様に
いや
兄弟と言うよりも 分身の様に
何処に行くにも 何をするにも
片時も離れる事無く 共に成長した
バルは王子らしく やんちゃな一面があったが
チョルモンは決して先に出る事は無く
バルが光なら 自分は影の様に
いつもバルとともにいた
劉と古くから交流のあった国の一つに
欄(らん)国があった
バルの他に跡継ぎのいないバートルは
バルの成人を待って
早い段階での結婚を考えていた
欄には双子の他に2男2女がいたので
異国に一人で嫁に出すのは寂しかろうと
双子揃っての輿入れを
国王直々に提案して来た
そう言った経緯で
バルとチョルモンには
既に許嫁(いいなづけ)がいた
バルとチョルモンは声変わりの頃から
伴の者を従えて
近隣諸国に見聞の旅に出されていた
勿論 欄国にも訪問し
美しく成長した
双子の王女との対面も果たしていたが
自分達が嫁ぐ
王子達の訪問に沸く王女側と違い
男のバルとチョルモンは
自分達に嫁いで来ると言う
王女の類い稀な可愛らしさに
嬉しく無いと言えば嘘になるが
結婚というもの自体に
まだ実感が湧かずにいた
バルは幼い子どもが大好きだった
歳下の子ども達も やんちゃだけど
世話好きなバルが大好きだった
医者 ダライ(海)の娘
チャナーチャン(芍薬の花)など
生まれて間もなくからよく遊んでやっていた
チョルモンはいい遊び相手にはなったが
兄とか弟と言った感じでは無かったし
ましてや妹などいなかったので
自分によく懐いていたこともあって
特別可愛らしく思った
腕を引き上げ一緒に馬に乗せてやったり
異国の話を聞かせてやったり
自分の前に座らせると
あごのしたにスッポリとおさまる
たんぽぽの花冠を乗せたチャナーチャンの頭は
お日様の香りがし
妹のいなかったバルの安らぎだった
遠い昔の
夢の様に幸せな時代だった
画像と話の展開は一切関係ありません
団体・出演者の関係、実態等
全て作者の妄想です。悪しからず
画像を拝借致しました(`_´)ゞサンクス