前回の記事で初めて『失敗談』というカテゴリーを設けましたが、さっそく2本目の記事を掲載することになりました
先日完成して引き渡したばかりの「サンダーバード風」のESP系EDWARDSブランドのベースですが…
4弦に若干ビリつきが出るという報告を受けました
当初はネックのアイロン矯正をした関係で若干逆反りの傾向があるせいではないかと思ったのですが、ビビリがブリッジ付近から聞こえるということで、とりあえず手元にたくさん残してある画像を検討しました。
ビリつきには様々な原因が考えられます。
ネックが正常であれば、弦高を下げ過ぎたために起こることが大半ですが、ナット・ブリッジ部分でのテンション不足やナットやサドルの溝が適正ではない事でも起こります
今回のベースは本体の重量バランスが悪いということで質量の大きいブリッジを採用したのですが、おそらく中国製なのでしょう。ブリッジのサドルの溝をみると1~4弦が全て同じ形で弦の太さの違いが考慮されていません。
サドル部分でのテンションが充分であれば問題ないのでしょうが、GIBSONのモデルも真似しつつもFENDER構造で製作されたこのベースはネックに仕込み角がほとんどないので、サドル部分のホールド性を高めるべく溝を深く広く修正します。
バダスのBASSⅡなども新品の状態ではサドル溝が切られていないので、そのまま使用するとビリつくことがあります。
3・4弦の溝を見れば広げてあるのが分かると思います
それともう一点、依頼主が使用している弦はボールエンドが大きいらしく、弦をセットする際にボールエンドが入りにくいという指摘を(画像つきで)受けました。
ブリッジ本体を送ってもらって在庫のある弦を色々と試してみると、どれも問題ない大きさだったのですが、近年は弦の選択肢も増えたので、入らない物もあるのでしょう
まずは10㎜径のリーマーで入口を広げたあと、
8㎜径の鉄鋼用ビットで穴を拡張します
本当は旋盤のような精密機械があればいいのでしょうが、精度が求められるほど深い穴ではないので、フリーハンドで拡張しました。
そして最大の問題は、サイドポジションマークの打ち忘れです
元は本体同様に真っ黒に塗装されたネックだったのですが、サイドポジションマークもおそらく塗装で白い点が打たれていただけだったのでしょう。
全ての塗装を剥した時点で私の記憶からも消し去られていました
もしプラスチック製や貝殻などのマーカーが埋め込まれていたのであれば、脱落した穴が残るので失念することはなかったと思いますが、穴がないので塗装だったと思われます。
サイドポジションマークを再建するに当たり、同じ依頼主による前回のオーダー(ジャガー風ベース)と同じように、大きめのドットを製作して視認性を向上させようと思います
この時重要なのは、4㎜径のドットなのだから穴開けのビットも4㎜で…というのではなく、やや大きい4.1㎜のビットを使用します
これは様々な穴開け(並びに塞ぎ作業)に言えることですが、ピッタリで打ち込むと接着剤の入る隙間がなくなり、逆に経年による脱落の原因になるリスクが高まると考えるからです。
穴はやや広めに開けておき、隙間に充分な接着剤が入るようにしておくことが、長期に渡って保持力を発揮できると考えます。
穴は広さと同時に深さも重要で、爪楊枝の頭をスケールに使って正確に合わせるようにします。
少量の接着剤を使用し、突き出た頭をカッターで削り取ります。
そのあとヤスリをかけて2000番のペーパーでならし
コンパウンドをかけて完成です。
かなり巨大ですが、小さい物体の視認が難しくなりつつある我々世代には有用なカスタマイズかもしれません
コレ、あとになって思いましたが、既存の白・黒やサイズにこだわることなく、赤べっ甲ガード材などを使って鮮やかに仕上げても良かったかもしれませんね
次回やることがあったら試してみようと思います