今回は、古い国産のレストア作業で必ず直面する「折れネジ」への対処方です。「ギター弄り」系のブログで沢山の方が取り上げているので屋上屋を架す必要もないかもしれませんが、人によって方法は様々なのでレパートリーの1つとしてください
まずはリアPU(リッケン社はトレブルPUと呼んでます)のエスカッションを留めるネジが1本折れてました。これは2㎜程度の細いネジで、奥深い所で折れたのではなく、ネジの頭のところで折れていたおかげで表面から見えていました
私はこういった場合、1.5㎜のビットで周囲に六角形状に穴を開け、次に細いマイナスドライバーを打って穴同士を繋げ、あとは先端の尖ったペンチで抜き取ります。
そのあと5㎜から6㎜のビットで穴をさらい、ダボを打ち込んで埋めてしまいます。
次はブリッジ搭載用の3㎜程度のネジが奥深い所で折れていました。この場合は3㎜の鉄鋼ビットでそのままネジを削り取ってしまいます。この方法だと穴を極端に広げずに済みます。
ビットは新しい切れ味抜群な物を使う必要があります。
切れ味が悪い古いビットでは先端が横に流れてしまいます。
それから、ドリルビットの根本に取り付けた四角い金属にご注目ください。
小さな金属ですが、これは強力なネオジウム磁石です。これで金属粉を全て回収します。金属粉がボディー内に残っていると、10~20年後これがまた錆を誘発することになります。
続いてジャズベース用のピックアップキャビティを切削します。
ロジャーの場合、ピックガードの下はキャビティーが広範囲に切削されていたようですが、私はJタイプの形状に合わせて最低限の切削量に留めています。
ピックガードに隠れる部分ではありますが、タイトに切削しています。
それから、長い年月ですっかりくすんでしまったペグを分解して磨き、スイッチやポットも分解して内部をクリーニングし、機能を回復します。
一番悩んだのはリッケン特有のステレオアウト(リック・オー・サウンド)をどうするか、という点です
これは「ステレオ」というか、フロントPUとリアPUの信号を別々に取り出す仕組なのですが、一般人にとって実用性があるかどうか、という議論に帰着すると思います。
配線自体は難しくありませんが、ステレオジャック側はステレオシールドで取り出した信号を、結局2系統のモノラル信号に分岐する必要があり、その道具の純正品はもう売ってないそうです。1時間もあれば自作できるシンプルな道具ですが、これも作って一緒に出品しても、必要とされるかどうか
ちょうど先日製作したマイワイフでも、ビリーは同じ仕組を使っていますが、彼はステレオジャックではなく、最初からモノラル2系統で出力しているようで、ベースには2本のシールドを突っ込んでいます。
クリススクワイアはプログレ演ってるのでこれを使って凝った音作りをしていますが、ロジャーはピック弾きでブリブリいわせるだけなので、ステレオ効果など使っているようには聴こえません
ちなみにこのJOODEEのジャックを外して見てみると、ステレオジャック側には使用した形跡がなく、モノラルジャック側の端子だけが激しく消耗しています。
これは決定的ですね。このJOODEEもモノラルのパラレル出力にアレンジしてしまおうと思います
消耗したジャックは廃棄し、新品の国産ジャック2個に交換します。
他には、ナットが酷いですね
巨大なナットが牛骨材なのは称賛に値しますが、溝は斜めだし、1弦が外側過ぎて作り直すしかないです。
弦の中央を均等に配列した場合、低音弦側の間隔が狭まらないといけないはずですが、逆に高音弦側が狭まっています
4→3→2→1弦の順番で溝を切ったせいでこうなったのです。
ナット製作の記事は何度も上げていますが、目分量でやるにしても、両端の1・4弦の溝を先に切っていればこうはなりません。
このサイズで切り出せる大きな牛骨材が入手できるか不安です
「ピックガードが出来れば8割方完成」などと豪語していましたが、まだまだハードルいっぱいありました