私のもとには丸ごと1本組む依頼や、持ち込みのリフィニッシュやレリック加工の他、部分的なカスタムやアレンジ、部品の交換といった依頼も寄せられるのですが、そういった中には普段弄ることのないタイプの楽器もあって焦ることがあります
過去記事でいえば、初めて見る類のビザールや、箱物、GIBSON系のセットネック物などがそうです
カスタムの素材として弄りやすいFENDER系がメインの私には、どれもチャレンジになります
この土日に作業したのは、IBANEZのレスポール型ベースのブリッジ交換でした
ブリッジとテールピースが別体のもので、右のブリッジを、ピッチの狭い左側のブリッジに交換します。
レスポールのTOMと同じタイプですが、スタッドの間隔が違うので、一度埋めてから開け直すことになります。
もしFENDERのブリッジでしたら工賃払って他人にやってもらわなくても、自分でやろうという人は多いでしょう
しかしこのタイプは、穴の位置が少しでもズレるとブリッジが入らなくなる恐れがあるし、センターずれの危険もあります。私だって慎重にならざるを得ないし、まして人さまの楽器なのでビビりますよ
ただ、過去に普通のレスポールを何本もオックスブラッド仕様にした経験がある(「過去の製作品」参照)ので、多少のノウハウは持っているつもりでした・・・
まずは自作工具の「スタッドボルトプーラー」でスタッドボルトを抜き取ります
そして木材で埋め、新しいスタッドボルトの中心に下穴を開けるのですが・・・
その際、元ブリッジの位置にはまったく疑問を持たず、スタッド間の中心線上にそのまま新しいブリッジの下穴を開けてしまいました※これが間違いのもと
垂直ドリルガイドを用いてスタッドの長さ分正確な深さで彫ります。
このように新旧スタッドの位置が部分的に重なる場合、埋めるのに使用した木材とボディー材の硬さが極端に違うとビットが流れてしまうので、切れ味の良い新しいビットで慎重に切削します。
1弦側のスタッドには、2㎜のロングビットで横穴を開け、ブリッジアースを通すのを忘れないようにします。そして当て木をしてスタッドを叩き込んだら、ちゃんとアースが導通しているかテスターで確認します。
ブザーが鳴ればOK
センターずれが生じていないことも確認します。
「センター出し」というと、文字通り中央に1本通して確認する方も多いでしょう。
私の場合は必ず1・6弦(ベースは1・4弦)を使います。弦の外側にあるネックの端っこの分量を最優先する考え方です
それと、中国製のような安物では、ポジションマークが必ずネックの中央に打ってあるとも限らないからです。
これで完成と思いました
・・・ところが、いざ弦を張ってセットアップを始めると、オクターブが全然合わせられない
かなり調整範囲の広いブリッジでしたが、1・2弦はブリッジベースからはみ出すくらいサドルをネック側に寄せてギリギリ合いましたが、3・4弦はまったく無理
あわててスケールを当ててみると・・・
ナットから12フレットまでは約38.5㎝
しかし12フレットからブリッジ中央までは
39.4または39.5
ほとんど1㎝近く後退した位置になってます
まったく異なるタイプのブリッジに交換するとか、元々異なるネックとボディーを組み合わせたのであれば、左右のみならず前後方向の位置も綿密に計測し直したと思いますが、
同じタイプのブリッジだし、なによりIBANEZ製だからと、無条件に信用して手を抜きました
・・・で、土曜の完成は諦めて、翌日に持ち越し
新たなスタッドは、リアピックアップ方向に9㎜お引越し
あらためてオクターブピッチを合わせると、サドルはブリッジベースからはみ出すことなく、ほぼニュートラルに近い位置でバッチリ合いました
【教訓】
それなりの評価を得ているブランドの製品であっても無条件で信用することなく、きちんと計測せよ
全体を見回しましたが、「made in 〇〇」の表記はどこにもありませんでしたが、IBANEZって今どこで作ってるの