この土日は天気こそ曇り空でしたが、風もなく塗装日和だったので、ここぞとばかりにステレとカステレ、2本の塗装作業に没頭しました
カステレの方はバインディング付きなのでひと手間余計にかかります。6mm幅のマスキングテープでバインディングをカバーしてから吹くのです。
実際のメーカーではバインディングごと塗装して、乾燥後にカッターの刃でバインディングにのった塗料を削り落としているのですが、私の場合は極端に薄く吹くので、ボディーの塗装まで傷つけるリスクを避けるためにマスキングしています。
トップコートまで吹き終えています。研磨はまだしていませんが、この時点ですでにポリ塗装とはまったく発色や風合いが異なることが見て取れるでしょう。
さらに本物のヴィンテージのように、ボディー表側は退色が進み、裏側の方がいくぶん赤みが強く残っている様子を再現しようと努力してみました
ステレの方ですが、オリジナルはステレの記事の1回目の広告画像に「Wide-Fade Chokolate 2-Color Sunburst」とあるように、チョコレートブラウンのサンバーストなのですが、こんなに濃い焦げ茶色の缶のスプレーは見当たらず、自動車用塗料に近いのがあるかと思えばラメが入ったメタリックカラーです。それでブラックを吹いた上から濃いワインレッドを吹いてみようかとも思いましたが、自分で勝手に作って出品するヤフオク用ならともかく、オーダー品で実績のない塗装方法を試して失敗する訳にはいかないので、今回は通常の2トーンで行きました。
このモデルは近いうちにまた作ると思うので、今後の研究課題とすることにします
さらにステレは、色味の他にも「Wide」という特徴を持った塗装を再現しています。エッジ部分の黒が幅広く塗装されているのですが、これは50~60年代の個体に時折見られるものです。
自分でサンバーストを吹いてみれば、こういった特徴を持つ個体が生まれる理由がすぐに分かると思いますが、1箇所でもスプレーが内側に入り過ぎてしまうと、他の部分もそれに合わせて内側に広くする必要が生じます。そんなことを繰り返していると、どんどん黒い面積が増えていきます。いうなれば「失敗作」だと言ってしまって良いかと思います。
ところが現代の物は、道具(スプレーガン)、塗料、方法(昔はピンで台上に浮かせて塗装)、合格品の基準というような、製造から管理体制まで厳格化されたことで製品は均質のものになります。これは工業製品として正しい進歩なのですが、悪い言い方をすれば、「個性的な製品」はハネられてしまうことになります。
例えば下の画像
これは1960年製のストラトですが、ここまでブラック部分が幅広く吹かれた個体は、現代のFENDERには見られません。当時であっても「マルチレイヤー」にされていてもおかしくないでしょう。私は「マルチレイヤー」は、失敗サンバーストの結果生まれたものではないかと想像しています。カスタムカラーはオーダーが入ってから製作に入ったのだと思いますが、そうであれば生産ラインの中にいくらでも塗装前段階のボディーはあったはずで、すでにサンバーストが吹かれたボディーをわざわざ上塗りする必要などなかったと思われるからです。
現代のFENDER社において、このWideエッジサンバーストは、ヴィンテージFENDERに特有の「個性的な仕様」として認識されているのではないでしょうか。もちろんFENDER社が、特にそういうことを公にアピールしているわけではありません。
しかし私は、2014年に発表されたストラト誕生60周年記念モデル「60th Anniversary 1954 Storatocaster Heavy Relic(Team Built)」を見るにつけ、その印象を深くしています。