突然猛暑が終わり気候が良くなったので、夜な夜な作業に勤しんでいます
今日紹介するのはネック周りの作業ですが、ステレのオーダーを受けた時に最も私の気を惹いたのは、その秀逸なヘッドデザインです
ギターにとってのヘッドデザインは、文字通りそのモデルの「顔」であるわけで、完コピ時代が過ぎ去って、当時の大手メーカーはヘッドのみデザインを変えてレプリカ品の製造を続けてはいますが、ボディーがストラトやレスポールであっても、それらの製品にはもはや当時の魅力はありません
私がストラトとテレのハイブリッドを製作する際、ストラトヘッドかテレヘッドの二者択一しか頭にありませんでしたが、ジーンは「浮き彫り」という方法で上手く両者のアイデンティティーの両立を果たしています
これを再現するというのは、普段のカスタムで必要とされる木工や電装、塗装の技術とはまた次元の異なるスキルが要求されますが、ちょっと高度な「図工」の感覚で挑戦しようと思います
中国製ではありますが、ローズに比べて個体数が少ないメイプルネックを用意します。中国製特有の不細工な部分の整形は塗装剥がし作業のついでに済ませました。
テレヘッドの型紙は、ちょうど今平行作業中で預かっているフェンダーJAPANのテレから取らせていただきました。我が工房に同時にやって来たのも何かの縁でしょう
ストラトのヘッドに写し取ったら、あとは彫刻刀で削っていきます
富山県の欄間職人さんが一枚板に花鳥風月を表現なさることを思えばお遊びみたいな作業ですが、杉や檜よりもはるかに堅いメイプル材を彫っていくのはかなり手こずりました。10分も削ると手が痛くなって握力が低下し、少しですが手に切り傷も負いました
はたしてジーン・ベイカーも、こんなマニュアルな作業をしたのでしょうか?
世界屈指の設備を誇る工場ですから、コンピューター制御の切削マシンにデータを入力し、あとはプログラムされた通りの形になって出てくるような気もします
もう塗装工程に入っていて、まだ下塗りの段階ですが、テレ部分よりも背後のストラト部分を少し濃く着色することでコントラストを明確にしてみました。オリジナルは全て同じ色味になっていて、おそらくステージなどで遠くから見るとストラトヘッドにしか見えないと思ったからです
このステレキャスターがいったい何本製作されて、いくらで売り出されていたのか知りませんが、こうして苦労して手作りすることで、完成に近づく喜びも感じることができるんですけどね
次回は電装系の作業をご覧に入れます