8月2日に実家に帰省した日に仕入れたSQUIER製SQシリアルのジャズベースを料理しています(8/4記事参照)。
実家でできる作業といえば塗装を剥ぐくらいなので、ボディーは剥がしてました。普段はネックもオールラッカーリフする私ですが、希少な日本製SQUIERでロゴ下に「made in japan」表記があるのでヘッド表面だけはオリジナル塗装を残して他はラッカーリフしました。そのヘッド表面も320番のペーパーでポリ塗装を薄く削ってからアンバーカラーでオーバーラッカーしています。
フェンダーJAPANのシリアル対照表によると、最初のJVシリアルが82~84年、次のSQシリアルが重なる形で83~84年となっています。初期SQUIERはストラトしか手にしたことはありませんが、次のEシリアルではマイナーチェンジが加えられていますが、SQは実質JVとなんら変化はないように思います。
ジャンク品ではないとはいえ製造から40年近い歳月が流れているわけで、不具合こそないものの、分解してみると早急に対処しておかないと問題が大きくなると思われる箇所が少なくなかったです
ほとんどのネジが露出部分だけではなく木材の中までサビており、大半を新品またはナチュラルレリックが進んだ中古品に交換しました。それからネジ穴の方も木材が劣化して黒い粉状のカスが大量に出てくるので、オーバーサイズのドリルでねじ山を一度さらってから丸棒で埋め、新しいネジ穴を開け直しています。
この初期SQUIERは、当時設立されたばかりのフェンダーJAPANが、ピックアップなどの一部パーツをUSAから供給されることで高価格帯商品に限られることになったことを受け、GRECOがラインナップに加えていた低価格帯商品の新たな供給元として作られたブランドだと思いますが、今日ではフジゲン製造というだけの理由で高値取引きされています。
ボディーはサンバーストにリフィニッシュしヴィンテージ風に仕上げます。
【左がSQUIERで右が同時作業中のTOKAI JAZZSOUND】
まずレストア中に一番驚いたのは、弦アースが設置されていなかったことです
ブリッジの下には固定用ネジ以外の穴はなく、キャビティー側には側面に穴らしきものがありましたが、前オーナーが開けようとしたものの、ロングドリルを持っていなかったようで5mmほどの深さしかありませんでした。
幸いなことに私はヴィンテージ風に仕上げる際、昔の「帯アース」を再現するので、今回は見せかけだけの飾りではなく、本当にコレでアースを取っています
【実際に通電しているかテスターで確認】
電装系は前オーナーがUSA製のPOTやジャック、オレンジドロップコンデンサーに換装していたので、それをそのまま使用させていただきました。配線は私のやり方で引き直しています。ただ、まだ新品のようでノブの回転は3つとも非常に固いです
コントロールプレートの取り付け方ですが、これはピックガードとの間に1mmほど隙間を開けるのがFENDERオリジナルの仕様です。
中国製のようにフロントPUキャビティーとコントロールキャビティーがつながっていると穴が見えてしまいますが、結構国産でもくっつけているのを見かけますね
それから次に驚いたのが、いつものようにミュート機構のネジ穴を開けようと定規を当てたら、ブリッジがリアピックアップキャビティーに対して平行に取り付けられていませんでした
【若干右に傾いています】
これも当然修正しておきます
さらにもっと驚いたのがナットです
1弦がネックの端に寄りすぎています。この原因は想像がつきます
4弦側から溝を切り始め、3弦⇒2弦⇒1弦 と切っていったのではないでしょうか
決まったスペースに文字を書く時と同じで、徐々にスペースを失って最後にキツキツになるパターンですね
ベースの場合は弦の太さの違いが大きいので、最初に4本分を均等にマーカーをつけると、低音弦側は窮屈に見えるようになります。慣れてくればそういった傾向も修正しながら作業できますが、そうでないなら1弦と4弦の溝を先に切るべきです。その間は2本なので、あとは目測でやっても何とか綺麗に仕上がるものです。この溝を切った職人は初心者であったとしか思えません。それに、このベースにOKを出した検品担当者もアウトです
いくら「オリジナルを尊重すべし」といっても、このまま出品する訳にはいかないので、当然牛骨ナットで作り直しておきます。
最近『Laid Back』というオッサン世代向けのギター雑誌が刊行されています。ちょうどこのベースを東京に持ち帰る道すがら、本屋でこの「3号」を買ってフェリーの中で読んでいました。
その中に「バラしてみたい懐かしの80'sギター」という企画があり、アリア・プロⅡのオリジナルモデルTS-500の解体記事がありました。実際に作業を担当するのは、ギター弄りの教科書といえる『エレクトリックギター・メカニズム』の著者、竹田 豊氏(ラムトリックカンパニー代表)
BC・リッチのサーキットを移植したような電装系で中学時代の私も憧れた楽器ですが、弦裏通しブッシュの並びがガタガタ、ブリッジの取り付けネジは、私が中国製に愚痴っているのと同じで3本とも10度近く傾いて打ち込まれています
竹田氏いわく、「会社的には組み立て工程を軽く見ていて、人件費の安いパートタイマーなどをあてていたのではないだろうか。実は多くのメーカーがこの傾向にあり、いい木材を使って美しい塗装をしているのに、組み立てが残念なために、結果残念なギターになってしまっているものが少なくない。」…だそうです。
そして、「今回は我慢ならなかった(笑)ので、ブリッジのネジ穴は埋めてまっすぐ開け直させてもらった。」という結末でした
これが「ジャパンヴィンテージ」の現実、といったところでしょうか
私もきっとそうする…というか、私のカスタム作業の半分くらいは、そういった修正のような気がします