ほぼ新古品状態で手に入れたオレンジ色のSQUIER、塗装を剥がしたら8ピース&表裏化粧板という残念なボディーだったので塗り潰しカラーにして利用します
今回目指しているのはすでに紹介したダフネブルーのマルチレイヤーなので、まずは3トーンサンバーストに塗装します。FENDER社が1958年にストラトに採用した3トーンサンバーストは、従来の2トーンに赤を加えたもので、実際に赤を吹く順序も2トーンに塗った後です。正確にはさらに黒で若干の「修正」が加えられたものが大半ですが。基本的には黄→黒→赤とかぶっているので、塗装が擦り減ったところでは黒の下は黄色が露出していて赤はありません。これをリアルに再現するにはオリジナルと同じ工程で塗装するしかありません。その意味でも、サンバーストを自前で塗装できる手腕が必要になります
今回のギターは、そのサンバーストの中でも60年代中期以降の3トーンサンバーストを再現します。それ以前のものとの違いは下塗りのイエローです。初期の3トーンは、アッシュの美しい木目を生かすように塗られた50年代の2トーンのイエローを引き継いでいました。それが64年頃から木目が透けて見えない、塗り潰しのイエローで下地が塗られるようになります。今回のボディーは8ピース&表裏化粧板なので、この木目の見えない64年以降の3トーンを再現します。
生地着色とプライマーの後、全体に塗り潰しのイエローを吹きます
【昼間の写真なのできれいに色が出ていませんが・・・】
次にリムのブラックを吹きます
【エッジ部分は裏側のリムを吹いた後にやります】
次に赤を吹きますが、これが一番緊張します。それは当時のFENDER社の塗装担当者も同じだったと思います。なぜなら、この赤の幅が一番個体差が激しいからです。手直しする度に徐々に赤の幅が拡大されていきます
今回はそこそこ上手くできたと思います。すべてダフネブルーに隠れてしまいますが、見えない部分も手を抜かないことが最終的なリアリティーにも影響すると考えます。
ちなみに、このサンバーストも全ての工程を市販の缶スプレーで吹いているわけですが、トライ&エラーを繰り返しながら改良を重ねた独自のノズルを装着して吹いています
【ピックガードに隠れる部分では赤を省略するのがFENDER流です】
3トーンを吹き終えたらクリアトップコートを吹き、いわば3トーンサンバーストを最後まで完成させるわけです。それからダフネブルーを吹きます。
サンバーストを吹く今となっては、塗り潰し単色はストレスフリーですね。これも数日おいてウェットサンディングを施し、研磨までやって、きれいなダフネブルーを完成させます。
【このまま出荷してもいいくらいです】
さて、ここからがいよいよマルチレイヤー加工を施していきます。一部はいつものようにカッターの刃などで塗装にダメージを与えていきますが、下地を露出させたい部分では、いつもより荒い800番で集中的にこすっていきます。
エルボーコンターやバックコンター部などは、サンバーストを通り越して木地が露出するまでこすります。
さて、FENDERカスタムショップのマルチレイヤーに肉薄できるでしょうか