久しぶりに「過去の製作品」カテゴリーへの投稿です
2017年に製作し、一度ヤフオクに出品したものの、落札されないまま自宅保管したままになっている物です。再出品するにあたり、ブログに取り上げておきます。
赤いボディーのエルボーコンター部に2本の白いラインが入ったムスタング。
パッと見、70年代から80年代にティーンエイジャー向け雑誌などに掲載されていた二光通販の広告で、通称「アフロムス」と呼ばれている物に見えます。
我々昭和40年男で、当時親のスネをかじることができた連中は5~6万円もするGRECOやFERNANDESを使っていましたが、昭和ひと桁の親からエレキを買ってもらえなかった者の多くは昼メシ代をケチって15000~20000円(を月賦で)なんとか買えるTOMSON・TOMASに目を向けたものです。
私などはそれも買えず、VISONという訳の分からない6000円のギターが初エレキでした。そんな訳で、「買ったその日から弾ける」というキャッチコピーの「アフロムス」にロマンを感じた40年前を今でも懐かしく想起するのです
名前の由来は、二光通販の広告でこのギターを弾いているアフロヘアーのお兄さんですが、1980年当時25歳としてももう還暦過ぎでしょうか。今どこでどうされているのやら…
当時の広告の宣伝文句を引用すると、
一人きりのコンサートinマイルーム 誰れに聴かせるのか君の愛を…
…これって想像するとかなりアホな状況ですが…なんとも昭和なセンスが滑稽な広告です
フェンダー社は近年、Charモデルとして「フリースピリッツ」を出しましたが、また今回新たなチャーモデルの新作ムスタングを発表しました。私としてはチャー以上にムスタングの存在を日本の若者に知らしめたアフロムスのシグネイチャーも出してほしいと思っていますが、FENDER社は出さないでしょうから、私が勝手にトリビュートモデルを製作することにしたのです。したがって改造はリフィニッシュだけで、メンテナンス以外ではサーキットやハードウェアーには一切手を加えていません。分解清掃は時間をかけて丁寧に行いました。
USA本社の人たちにも教えてあげたい。日本で一番有名なムスタングはコレなんだと…
今回紹介するのは、そんなアフロムスを私が丁寧にレストアしたもの・・・ではなく、本物のFENDER USAムスタングをリフィニッシュしたものです。しかもヘッドシリアルとビックガード裏のシリアルNoラベル、PUデイトやPOTデイトも全て1977年製で一致している貴重なフルオリジナル品です。
フルオリジナルではありますが、この年代だとペグはシャーラー製Fキーになっているはずが、この個体にはストラトでもせいぜい76年までにしか見られないFENDER自社生産Fキーの在庫品が使用されています。ペグのアップ画像を見ると、シャフトがケースの下まで貫通したFENDERキーであることが確認できます。
シンコーミュージックの「ムスタング・オーソリティー」等のギター本では、ムスタングにはプラスチックノブのFキーから直接シャーラー製Fキーに移行したように書いてありますが、過渡期にはこういったイレギュラー品もあるのでしょう
そんな貴重品を通販品に似せるとは!おふざけが過ぎると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私自身はおふざけのつもりは毛頭なく、日本においてエレキギターの普及拡大に大きく貢献したこのモデルへのオマージュとして製作してみました。日本にムスタングの存在を広く知らしめたのは、CHAR以上にこの二光通販のアフロ兄さんであったというのが私の見解です。
【本物のアフロムスと】
この「なんちゃってアフロムス」でステージに立てばウケること間違いなし。ちなみに現状復帰も可能なようにオリジナルの塗装は下地のシーラー層を残してあります。カラーコートとトップコートはラッカーなので溶剤で落として再度ナチュラルに戻すことも容易です。重量はデジタル計測で3160gと劇的に軽量!フルオリジナルのハードケースも付属します。
【公開画像】
【ブリッジサドルのモディファイについて】
再出品にあたり、ムスタングが生来抱える構造上の問題に対処いたしました。
ムスタングは弦高調整が難しいというよく話を聞きます。FENDER特有のアールのきつい指板に加え、スケールが短くて弦のテンションが低いために1弦のチョーキングで音詰まりを起こすというのです。それで仕方なく弦高を上げざるをえず、結果弾きにくいという状況に陥ります。
この問題の原因として指摘されるのは、ムスタングの装備するブリッジサドルが、各弦個別に弦高調整ができるタイプではなく、サイズの異なるサドルによってあらかじめセットされた円弧を変更できないことです。すなわち、1・6弦用に5/16インチ、2・5弦用に3/8インチ、3・4弦用に25/64インチという3種類が用意されているにもかかわらず、2・5弦用と3・4弦用のサイズが近すぎるために、弦高を下げると真っ先に1・6弦が音詰まりを起こし、1・6弦がビビらないようにセットすると逆に3・4弦が高すぎて弾きにくいという症状が起こるのです。
それに、私がこれまで見たUSA製ムスタングの中には、どう見ても2・5弦と3・4弦に同じ物が使われている物もありました。生産ラインの人間が、2・5弦用の在庫が先になくなった時、もうすぐランチの時間だったので「これ使っちゃえ」と3・4用を入れたのではないかと勘ぐってしまいます。
ともあれ、対処法としては、各弦独立して弦高調整できるジャガー、ジャズマスター用のブリッジサドルに交換することが一般によく知られています。現在では、グラフテック等からもムスタング用のサドルがリリースされています(サドルは金属ではない)。ネットで見た応急処置としては、カッターナイフの刃の一片(菱形のやつ)を1・6弦の下に敷くというものがありましたが、精神衛生上奨められるものではありません。かといってジャガーやジャズマスターの物はスパイラルサドルなので、ルックスがプレベやジャズベみたいで嫌です。
そこでちょっと荒っぽいですが、オリジナルのサドルをボール盤にセットして外周を削り、直径を詰めて1・6弦用と3・4弦用のちょうど中間くらいの大きさにサイズダウンしました。これによってノーマル状態よりも弦高を低くセットできるようになり、かなり弾き易くなりました。【公開画像】の中に、ブリッジサドルのbefore-afterの画像を並べてあります。
★偶然にも最初の出品後、私が普段パーツ調達でお世話になっている大阪のギターワークスさんから新作アイテムの案内メールが届き、まさにコレ! ムスタング用アジャスタブルサドルがリリースされたという報に接しました。デザインはムスタングのサドルのまま、各弦に弦高調整用イモネジが装備されています。【税込み5940円】これがお奨めですね。
http://goo.gl/SD2qTN