ボディー側はかなり形になってきたのでネックを挿し込んでみます。
スティングの画像と比べてみると、違和感を覚えるポイントがあります。余計な21フレットが全体のレイアウトバランスを壊しているのが明確です
ネックエンド部を真横から見ると、最終21フレットは完全に延長されたフィンガーボードの上にあることが分かります
これは切断するしかないですね
フレットを抜いて切断します。
そもそも近年の中国製は、ギターもベースも何故余計な1フレットを追加するのでしょうか?
ストラトのツバ出しによる22フレット化の元祖は、日本人ビルダーがスティーブ・ルカサーモデルに施したのが最初だとする記事を読んだことがありますが、それとブラッド・ギルスが愛用の赤(黒ガード)のストラトのフィンガーボードに指板を接ぎ足して22フレット化したのとどちらが先かは分かりません。
70年代末のFERNANDESがツバ出しではなく、ネック自体を長くして1フレット追加していましたが、その分ネックポケットを深くして装着していた訳ではなかったので、ネックの突き出し量が多くなり、ペグの位置も遠くなっていました。
それからギターの場合は感じませんが、ベースの場合はボディー側の重量が軽い個体はヘッド落ちを感じる場合もありました。
またベースの場合、演奏性だけではなく音色にも大きな影響があったはずです。特にジャズベの場合、ペグ(ナット)が遠ざかった分、ブリッジもネック側に移動したため、リアピックアップとブリッジの間隔は、70年代後期のFENDER製よりももっと接近し、かなり硬めの音色になっていたはずです。
いずれにしても、以上挙げた例は楽器そのものの持つ音域の拡大を目的としたものですが、近年の中国製楽器のツバ出しフレット追加の目的はそうではなく、ネックジョイント部の加工精度の低さ(雑さ)を覆い隠す目的によるものです。
ボディーとネックの接合部だけではなく、そこに組み合わせられるピックガードの設置状況は、見るからにその楽器の加工精度を表現するものとなります。
中国製の場合、ツバの下の隠れている(ネックエンド周辺)ピックガードの切り欠き部分はガタガタです
プレベとジャズベの場合、ツバ出しで21フレット目を追加するのではなく、20フレット目がツバ出しになっています(ネック本体上には19フレット)。音域の拡大が目的ではないという明確な証拠です。
BACCHUSは、SQUIERと並んでPHTOGENICやSELDERよりは各上に評価されているブランドだと思いますが、わざわざオリジナルOPBとは異なるツバ出し仕様にしているということは、大いに怪しんでいいポイントです。
それを検証する意味でも、今回はツバ出し部分をカットしてみることにしましょう。
ツバ出し部分をカットしたら、ヤスリとサンドペーパーを使って仕上げ直しますが、私はこの時点でもう問題に気づきました。エンド部の角が鋭角過ぎます
ボディーと合体させてみると、この角ばったエンド部は、なだらかなアールを持つネックポケットの奥まで入りません1.5mmほどの隙間が空いてしまいます。
これを隠すのが「ツバ」の役割だった訳です。
…という訳で、この角ばったエンド部をさらに削ってネックポケットの形状に合わせていきます。
こういった作業を通じてブログで発信し続けていることですが、カスタムは1箇所を弄ると、その影響が必ず他の部分に広がり、さらなる追加作業が発生します
接合部の形状を合わせてネックをさらに深く挿し込むということは、ジョイントネジの位置も合わなくなるということです。なのでネックエンド部の整形・再塗装と併せてネジ穴も埋めておきます。
それともう一つ気になる点を見出してしまいました
これは「本物」ではやっていないと思いますが、ピックガードレスにすることでボディーからとび出るネックの高さがより高くなった印象になります。
ブリッジ等の全体的なディメンションが若干変わりますが、ネックポケットをピックガードの厚さ分彫り下げて調整します。
その決断に至ったのは、この個体のネックポケットに、ルーターが「暴走」したような痕跡があったからです
見えない部分ということで市場に出したのでしょうが、この深さがちょうど2mmほどだったので、これを消して接合面積を回復する目的もあります。
結局のところ「フルカスタム」と言っていい状況になりつつありますが、良い物にするためには仕方のないことです…